大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【夜へ急ぐ人】

時は、夜8時40分頃であった。

またところ変わって、中央2丁目の商店街の裏の露地にて…

露地は、廃墟の建物がたくさん並んでいた。

(チャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリン…)

三世《みよ》さんは、公衆電話のコーナー台に置かれている10円の赤電話機のコイン投入口に10円玉3万枚を入れた。

……………………

時は、夜8時50分頃であった。

またところ変わって、国電松本駅のすぐ近くにあるホテルのシングルルームにて…

部屋に設置されているミツビシのタッチチャンネルの18型のカラーテレビの画面に信越放送テレビで放送されていた『8時だよ!全員集合』のエンディング画面が映っていた。

(プチン…)

番組が終了したあと、私はテレビの電源を切った。

その直後であった。

(ピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロ…)

部屋に備え付けの電話機の着信音が鳴った。

私は、受話器を手にとったあと話した。

「もしもし…お願いします。」

その後、外部と電話がつながった。

この時、受話器のスピーカーからものすごくおそろしい声が聞こえた。

この声は、番頭《ばんと》はんと太兵衛《たべえ》に違いない…

私は、声を押し殺しながら現場の様子を聞いた。

またところ変わって、商店街の裏の露地にて…

番頭《ばんと》はんは、太兵衛《たべえ》に対して怒った声で言うた。

「太兵衛《たべえ》さん、イワマツグループとイワマツ家の財産のことはいいかげんにあきらめたらどうかな…この前も言うたけど、イワマツグループとイワマツ家の財産書は行方不明になったのですよ。」
「オドレ竹宮!!さっきから聞いていたらゴタクばかり並べているじゃないか!!」
「あんたはこのあいだ興信所から来た調査の結果が来たことを知らないみたいだね…体力E・性格E・計画性E・学力もE・取得をした資格はまったくなし・統率力E・統治力E・判断力E…と極悪ですね…たったひとつだけランクがいいのは優しさ思いやり・Aだけ…でしたね〜」
「何だよ…優しさと思いやりがよければいいじゃないか!!」

太兵衛《たべえ》の言葉を聞いた番頭《ばんと》は『ヤレヤレ…じいさんはなにも分かってないみたいだね。』と言うたあと太兵衛《たべえ》に言うた。

「じいさんは優しさ思いやりだけがあればいいと言うけど、計画性がない、統率力がない、統治力がない、判断力がない…そんな人間はイワマツグループの経営者になる資格はありませんよ。」
「決めつけでものを言うな!!」
「太兵衛《たべえ》さん、ワテはあんたのためを思って言うてるのですよ…太兵衛《たべえ》さんの性格でイワマツグループを経営したらものの5分で経営が破綻しますよ〜」
「だまれ竹宮!!ワシはオドレと違って苦労してきたのだぞ!!」
「太兵衛《たべえ》さん、あんたは戦時中にたくさん悪いことをしていたよね。」
「なんだと!?」
「あんた、昭和19年の秋ごろに九州のチランにあった特攻隊の基地にいたよね。」
「いたけど…」
「入隊してから何日目かおぼえてないけど、あんたは脱走事件を起こしたね〜」
「それがどうかしたのか!?」
「上官をぶっ殺して、強奪した拳銃《チャカ》を使って銃乱射事件を起こした…その後、貨物列車に乗ってナオエツへ逃げた…その後、ダフ屋の男と一緒にサドガシマから大陸へ渡ったね〜」
「おぼえてない!!」
「おいコラ!!ウソついてもムダだ!!オドレが犯した悪事は…泊の漁港にいた男が一緒にいた探偵屋に話していたところを聞いて知ったのだよ〜」

なんだって…

私が元ダフ屋と話をしていたところを…

番頭《ばんと》が立ち聞きしていた…

叫びそうになった私は、必死になって声を押し殺した。

番頭《ばんと》はんは、太兵衛《たべえ》に対してこう言うた。

「太兵衛《たべえ》さんよ…オレはあんたのことを思って言うたのだよ…あんた子どもの時にトラコーマを患っていたよね…その上にロクマクを患《わずら》っていたよね…そのまた上に糖尿病を患《わずら》っていますね…身体に重大な支障が出る恐れがあるので薬が必要である…にもかかわらず薬を持たずに家を飛び出した…あんた…このままでは手遅れになりますよ〜」
「何だと!?」
「太兵衛《たべえ》さん…手遅れにならないうちに壬生川《にゅうがわ》に帰ったらどうですか?…壬生川《にゅうがわ》へ帰れば、優しい人たちがたくさんいるのですよ〜」

番頭《ばんと》はんは、太兵衛《たべえ》の肩を気安くポンポンと叩いたあと、口笛を吹きながら立ち去った。

太兵衛《たべえ》は、全身をワナワナと震わせながら怒り狂った。

恐ろしくなった私は、電話を切った。

そして、その次の日の朝8時頃であった。

ところ変わって、浅間温泉の旅館の前にて…

旅館の前に黒のキャデラックが停まっていた。

キャデラックの前に相原組の組長ととりまきの構成員《チンピラ》たち50人がいた。

相原組の組長が、キャデラックに乗ろうとしたときであった。

「オドレ相原!!」

太兵衛《たべえ》が、刃渡りの鋭いナイフで組長を斬《き》りつけた。

太兵衛《たべえ》に斬《き》りつけられた組長は、左の肩に大ケガを負った。

相原組長を斬《き》りつけた太兵衛は、その場から逃走した。

「組長!!」
「組長!!」
「オーイ!!組長が斬《き》られたぞ!!」
「オドレ太兵衛《クソジジイ》!!」
「追え!!追うのだ!!」

このあと、40人の構成員《チンピラ》たちが太兵衛《たべえ》を追いかけ始めた。

相原組長は、病院に搬送されたあと手当てを受けた。

診断の結果、命に別状はなかったが全治1ヶ月の大けがと診断された。

しかし、相原組の構成員《チンピラ》たちは怒り心頭になっていた。

その頃であった。

私は、国電松本駅から篠ノ井線の各駅停車《どんこう》に乗って長野方面へ向かった。

太兵衛《たべえ》は…

このあとも、暴挙に出るかもしれない…

そうなれば…

サイアクの事態が生じる恐れがある…

どうしたらいいのだ…

………………………
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