大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【バ・カ・ダ・ネ】

時は、5月11日の夕方5時過ぎであった。

またところ変わって、松山市堀江町《しないほりえちょう》にある三浦工業《みうらのほんしゃ》のオフィスにて…

本社の海外事業部と販売促進部のふたつを兼務している蔵本秀悟《くらもとしゅうご》(56歳)は、会議室から帰って来たあとオフィスに戻って来た。

この時、上の人が秀悟《しゅうご》に声をかけた。

「蔵本《くらもと》くん。」
「あっ、はい。」
「来週15日のあれは、蔵本《くらもと》くんが担当だったね。」
「あっ、はい。」
「よろしくたのむね。」
「かしこまりました。」

上の人は、帰宅準備を始めた秀悟《しゅうご》に対して声をかけた。

「蔵本《くらもと》くん。」
「はい。」
「来週のあれ…」
「私が担当していますけど…」
「わかってるよ…それとは別の話だけど…」
「なんでしょうか?」
「あすのおひるごはんは、私と一緒に食べに行くから…」
「課長と一緒に食べに行くって?」
「そうだよ…あすの午後は、遠方から大事なおきゃくさまがお越しになるので…奥さまとご長男さんと一緒にお願いします。」
「家族も一緒に行くのですか?」
「そうだよ…蔵本《くらもと》くんのご長男さんに紹介したい人がいるのだよ…先方さまは、蔵本《くらもと》くんのご長男さんにお会いしたいと言うてるのだよ。」
「先方さまは、なんで長男に会いたいと言うてるのですか?」
「ご長男さんは、郵便局の契約社員《ケーヤク》よね。」
「そうですが…」
「先方さまは、蔵本《くらもと》くんのご長男さんをなんとかしてあげたいと言うてるのだよ…いつまで契約社員《ケーヤク》でいるのか…いつになったら正社員になるのか…と…」
「分かりました。」
「それじゃあ、明日の11時くらいに行くから…よろしくお願いします。」

上の人は、秀悟《しゅうご》に伝言を伝えたあと帰宅準備に入った。

時は、夕方6時半頃であった。

またところ変わって、松山市福角町《しないふくずみまち》にある特大和風建築の家にて…

家には、秀悟《しゅうご》と妻・美保子《みほこ》(55歳)と長男・明憲《あきのり》(31歳・郵便局勤務)と次男・温大《はると》(20歳・大学生)の4人が暮らしていた。

ダイニングキッチンに美保子《みほこ》がいた。

テーブルの上には、美保子《みほこ》が作った料理が並んでいた。

この時、モノトーンカラーのネクタイに濃いネイビーのスーツ姿の秀悟《しゅうご》が帰宅した。

「ただいま〜」
「あなた、お帰りなさい。」
「ああ。」
「あなた、お風呂わいてるわよ。」
「入る。」

疲れた表情を浮かべている秀悟《しゅうご》は、お風呂場へ向かった。

時は、夜7時20分頃であった。

ところ変わって、次男・温大《はると》の部屋にて…

温大《はると》は、大学に提出する書面《レポート》を作成していた。

(コンコン…)

この時、ドアをノックする音が聞こえた。

ドアの外から美保子《みほこ》の声が聞こえた。

「温大《はると》…お兄さんが帰って来たわよ。」
「ああ。」

ところ変わって、ダイニングテーブルにて…

テーブルに家族たち4人が集まっていた。

4人は、ひとことも言わずに晩ごはんを食べていた。

その中で、美保子《みほこ》が明憲《あきのり》に声をかけた。

「明憲《あきのり》。」
「かあさん。」
「あしたの午後は、おとーさんとおかーさんと一緒にお昼を食べに行くから…」

明憲《あきのり》は、つらそうな声で美保子《みほこ》に言うた。

「残っている仕事がたくさんあるのだよ…あしたじゅうに仕上げないといけないのだよ〜」

美保子《みほこ》は、あつかましい声で明憲《あきのり》に言うた。

「やすませてもらいなさい!!郵便局に代わりの人はいるのでしょ!!」
「人手《ひと》が足りないのだよ!!」
「やすませてもらいなさい!!」
「うるさいな!!」
「明憲《あきのり》、それならなんで勤労青少年施設《ならいごと》に行かないのよ!?」
「またその話し…」
「明憲《あきのり》は好きなコがほしいの?ほしくないの?」
「かあさん!!」
「かあさんは、明憲《あきのり》が勤労青少年施設《ならいごと》に行かないことを心配しているのよ!!」
「かあさん!!」
「おとなりの次男くん(34歳)は勤労青少年ホームの英会話教室で知り合ったOLさんと来月、椿館(ホテル)で挙式披露宴を挙げるのよ!!お向いの三男くん(29歳)はバドミントンを通じて知り合った女性(31歳)にプロポーズしたのよ!!」

秀悟《しゅうご》は、怒った声で美保子《みほこ》に言うた。

「美保子《みほこ》!!」
「あなた!!」
「ごはんを食べている時にガミガミガミガミと言うな!!」
「あなたも明憲《あきのり》に対してこうるさく言いなさいよ!!」
「だからなにを言えと言うのだ!?美保子《みほこ》がガミガミガミガミといいつづけたら明憲《あきのり》がイシュクするぞ!!」
「あなた!!」
「ごはんが冷めるから早く食べなさい!!」
「分かったわよ〜」

美保子《みほこ》は、ブアイソな表情で晩ごはんを食べた。

秀悟《しゅうご》は、砥部焼のお茶わんに盛られている白ごはんをバフバフと食べまくった。

時は、5月12日の朝10時半頃であった。

またところ変わって、京田辺市松井ヶ丘の健介《けんすけ》さんの実家にて…

実家の大広間に、久信《ひさのぶ》かずえ夫婦と桃子と桃子の夫の両親・井関恒興琴音夫婦《いせきつねおきことね》の5人がいた。

子どもたちふたりは、保育所に行ったので家にいなかった。

桃子は、テーブルの近くでお茶をいれる支度をしていた

久信《ひさのぶ》とかずえと恒興《つねおき》と琴音《ことね》の4人は、最初の数分のあいだ軽く雑談をした。

その後、琴音《ことね》は大きなふうとうをテーブルの上に出しながらやさしい声で言うた。

「おかあさま。」
「あっ、はい。」
「きょうは、健介《けんすけ》さんにちょうどいいオハナシを持ってきたのよ。」

かずえは、とまどい気味の声で言うた。

「ちょうどいいオハナシって、なんでしょうか?」

琴音《ことね》は、困った声でかずえに言うた。

「あらどうしたの?」
「いえ、その…急にいいオハナシを…と言われたので…困っているのです。」

かずえがものすごく困った声で言うたので、琴音《ことね》は困った声で言うた。

「健介《けんすけ》さんは、他に好きなコがいるの?」
「えっ?」
「だから、健介《けんすけ》は他に好きなコがいるのかなって聞いてるのよ。」
「他に好きなコがいるのかと聞かれても困るわよ〜」
「ごめんなさい…健介《けんすけ》さんに好きなコがいるのであれば仕方がないけど、もし近くにとしごろのコがいないのであればいかがですか?…と言おうとしたのよ。」
「そうですか〜…びっくりしたわ〜」
「ごめんなさいね。」

琴音《ことね》は、やさしい声でかずえに言うた。

「ところで、健介《けんすけ》さんが好きなコは…どんなコかな?」
「どんなコって…小さいときからの幼なじみの子よ。」
「ああ、健介《けんすけ》さんの小さいときからの幼なじみの子ね…それなら問題ないわよ…ねえあなた。」

恒興《つねおき》は、おだやかな声で『ああ、そうだな〜』と答えた。

琴音《ことね》は、過度にやさしい声でかずえに言うた。

「おかあさま、時間が空いている時でいいから…健介《けんすけ》さんの好きな子をみしてくれるかな〜」
「えっ?」
「だから、健介《けんすけ》さんの好きな子がどんな子か知りたいのよ〜」
「そうだったわね…あなた…」

かずえから言われた久信《ひさのぶ》は、ものすごくいいかげんな声で『ああ、そうだな〜』と答えたあとつらそうな表情を浮かべながらつぶやいた。

困ったな…

ゆりこちゃんは、もめごとをたくさん抱えているから健介《けんすけ》と結婚することができないのだよ…

井関《いせき》のおとーさまとおかーさまのイコウに…

どう答えればいいのだ…
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