大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【遠ざかる日】

(ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…キーッ…プシュー…)

時は、午前10時20分頃であった。

私が乗っている各駅停車《れっしゃ》が日田駅の大分方面寄りのプラットホームに到着した。

列車がプラットホームに停車したあと、とびらがひらいた。

ショルダーバックを持って列車から降りた私は、改札口を通って駅の外へ出た。

…………………………

(ミーンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミーン…ジー…ミーンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミーン…ジー)

日田駅《えき》を出発してから30分後であった。

木々にとまっているミンミンゼミとアブラゼミの鳴き声がひびいていた。

青い空に白い入道雲がもくもくとわいていた。

ショルダーバックを持って旅をしていた私は、目的地へ向かって歩きつづけた。

……………………………

時は、午前11時5分頃であった。

またところ変わって、日田市城町《しないしろまち》にある文房具屋にて…

文房具屋は、祝夫《のりお》の実家であった。

私は、(カードリッジ式の)万年筆のスペアインク10本入りの箱を10箱とメモパッドの新しいものを3冊購入した。

代金をはらったあと、領収書を受け取った。

私は、接客していた女性(祝夫《のりお》の兄嫁)に声をかけた。

「すみません。」
「はい。」
「え~と、こちらに一祝夫《にのまえのりお》さまはいらっしゃいますか?」
「祝夫《のりお》さんは、うちの義弟でございますが〜」

私は、ものすごく言いにくい声で兄嫁さんに言うた。

「あの〜…非常にもうしわけないお話でございますが、義弟さまの奥さまの則本温子《のりもとはるこ》さんのことでお話をうかがいたいのですが…」

兄嫁さんは、私に対して深刻な表情で言うた。

「義弟は、温子《はるこ》に暴力をふるわれたのです。」
「えっ?温子《はるこ》に暴力をふるわれた?…それはどう言うことでしょうか?」
「温子《はるこ》は、義弟に対してしつように暴力をふるっていました。」
「しつように暴力をふるっていた?」
「はい。」

兄嫁さんは、私に対して深刻な表情で言うた。

「義弟は温子《はるこ》とはリコンしました。」
「リコンした?」
「ええ。」
「協議《はなしあい》は…」
「しませんでした!!」
「えっ?…協議《はなしあい》をせずに一方的にリコンしたのですか?」

兄嫁さんは、えらそうな表情で『文句あるのですか!?』と言うたあと私にこう言うた。

「則本《のりもと》の家の人間は、手前勝手な人間ばかりなので頭がボロいのです!!」
「頭がボロいって…」

兄嫁さんは、私に対して不満げな表情で言うた。

「うちは、義弟と温子《はるこ》がサイコンすることに関しては猛反対でした…うちが猛反対しているのに、義父母《おとうさまとおかあさま》がつらそうな表情を浮かべながら『(温子《はるこ》の子どもたちに父親がいないのはかわいそうだとは思わないのか〜』と言うたのです!!」
「父親がいない子どもはかわいそうだとは思わないのか…義父母《おとうさまとおかあさま》は、なんでそんなことを言うたのですか?」
「人生が不利になると言うたのです!!」
「それはどう言う意味でしょうか?」

この時、店の奥にいた祝夫《のりお》の両親が店の奥から出てきた。

祝夫《のりお》の両親は、あつかましい声で私に言うた。

「本当に不利になるのだよ…ワシらは、温子《はるこ》の子どもたちがしあわせになるために祝夫《のりお》にサイコンしろと命令したのだよ!!わしの親類方のおいが片親で育ったことが原因で、何かと苦労したのだよ!!」
「子どもたちが大きくなった時に素敵な人と結婚する時が来るのよ…相手に両親がいるのに自分方には片親しかいなかった…その時に、相手方の家の人からどぎつい言葉を浴びせられるのよ!!」

祝夫《のりお》の両親から厚かましく言われた私は、言葉を返すことができなかった。

祝夫《のりお》の父親は、私に対して不満げな表情で言うた。

「だが…温子《はるこ》の性格がすごく悪かったことが原因で…ふたりの結婚生活は長続きしなかった…温子《はるこ》の性格が悪いのは、久枝の伯父伯母にあるのだよ!!」

私は、祝夫《のりお》の父親に対してすごく困った声で『あの〜、それは一体どう言うことでしょうか?』とたずねた。

祝夫《のりお》の父親は、私に対して『久枝の伯父伯母が温和な性格だからだ!!』と答えた。

私は、すごく困った声で祝夫《のりお》の父親に言うた。

「あの〜…温子《はるこ》の伯父伯母が温和な性格であるのがそんなにいかんのですか?」

祝夫《のりお》の母親は、私に対してあつかましい声で『久枝の伯父伯母が温子《はるこ》を甘やかしてばかりいたのよ!!』と答えた。

祝夫《のりお》の父親は、すごくあつかましい声で私に言うた。

「こんなことになるのであれば、祝夫《のりお》にサイコンをすすめるのではなかった!!」

祝夫《のりお》の母親も、私に対してあつかましい声で言うた。

「ええそのとおりよ!!…祝夫《のりお》は、生まれた時から縁《エニシ》がなかったのよ!!…だから温子《ドサイアクおんな》しか…いなかったのよ…」

なんとも言えない…

………………………

(カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ…)

それからまた1時間後であった。

またところ変わって、文房具屋から右へ歩いて50歩先にある甘み屋にて…

店内に、かき氷の氷を削る機械の音が聞こえていた。

店内には、かき氷を食べに来た若いカップルさんたちと女子高生たちとご近所の主婦たちと近くにある零細工場《こうじょう》の経営者のハゲ親父がいた。

その中で、ショルダーバックを持って旅をしていた私が入店した。

「いらっしゃ~い。」

私は、店のおばあちゃんに声をかけた。

「おばあちゃん、ペプシ(コーラ)ちょうだい。」
「110円よ。」
「へいへい。」

私は、ショルダーバックに収納されていたサイフを取り出したあと110円を取り出した。

サイフをショルダーバックに収納したあと、私は110円をおばあちゃんに渡した。

おばちゃんは、私に対して『そこの冷蔵庫に入ってるわよ〜』と声をかけた。

私は、ペプシのロゴ入りの飲料製品《ソフトドリンク》が入っている中型冷蔵庫《れいぞうこ》の戸を開けたあとペプシ(コーラ)の小瓶を取り出した。

(プシュー…)

中型冷蔵庫《れいぞうこ》の戸をしめた私は、栓抜きを使って王冠《フタ》を空けた。

私は、コーラをひとくちのんだあと店のおばあちゃんに声をかけた。

「おばあちゃん。」
「なあに?」
「ちょっとたずねたいことがあるけどいい?」
「いいわよ。」
「一《にのまえ》の文房具屋の人から聞いた話だけど…一《いえ》の次男さんとサイコン相手の女性がリコンした…と言う話は…」
「知ってるわよ。」
「あっ、知っていたのね。」

この時、宇治金時《かきごおり》を食べていたハゲ親父が私に対してこう言うた。

「嫁の名前がよくなかったのじゃないかな〜」
「えっ?…それはどう言う意味ですか?」
「はること言う漢字がよくないのだよ。」
「ああ…たしか…温泉の『温』と子どもの『子』の漢字二文字《ふたもじ》だった。」

店のおばあちゃんは、私に対してこう言うた。

「親御《おや》は、温和な娘に育ってほしい気持ちでつけたけど、それがよくないのよ。」

ハゲ親父は『そうそう』と言うたあとこう言うた。

「温子《はるこ》の両親は、育児をする資格がなかったのだよ…自分たちが大間違いをしたことが分からないのだよ…だから温子《はるこ》はざせつしたのだよ。」
「そうよね〜」

なんとも言えない…

私は、そうつぶやきながらのみかけのペプシコーラを一気に飲み干した。

…………………………
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