初恋の糸は誰に繋がっていますか?
「やっぱりまだ信じられないんじゃない?
私も調べようか?」
奈津実が黙り込んでいた私を心配したのか、覗き込むように声をかけられたので無理矢理笑顔を作った。
「ありがとう、もういいよ。
あの頃のことは綺麗な思い出にしておくから。
だけどこの頃帰り道に視線を感じてて、もしかして彼が私かどうか確認しているのかとちょっと期待してたのになぁ」
そう言ってため息をつくと奈津実が、はぁ?!と大きな声を出し道行く人達が驚いてみている。
「それ、ストーかとかじゃ無いの?!警察行かなきゃ!」
「ちょっと落ち着いて。
今思えば気のせいだったのかもしれないって思うし」
怒っている友人を必死に宥めていたら前に影が出来て、二人で顔を上げる。
そこには森山常務が怪訝そうな顔で立っていた。
その後ろには秘書の男性が眉間に皺を寄せている。
「ストーカーとかいう不穏な言葉が聞こえたのだが」
「いえ!なんでもないです!」
私は焦ったように顔の前に手を出し否定する。
常務は不審そうにじっと私の顔を見ていて、異様に緊張する。