初恋の糸は誰に繋がっていますか?
「本当か?
だが、もしも本当なのだとしたら気のせいだけで済まさないように。
何かがあってからでは取り返しがつかないのだから」
急に硬い表情になった常務にビクッとする。
真面目な人だとは分かっていたけれど、私はこういう点でも甘い考えをしていてそれが仕事に影響する可能性があると常務には思われてしまったのかも知れない。
「ご心配をおかけして申し訳ありません。
気のせいかと思っていましたが、注意するように致します」
私が急いで立ち上がり頭を下げると常務は何か言いそうに口を開いたが隣にいた秘書の人が、常務お時間がと声をかけている。
「とにかく気をつけるように。では失礼」
再度私と奈津実は頭を下げて、常務は足早に会社のビルへ戻っていった。
初めて簡単な挨拶以上の会話をし、緊張が解けて胸に手を当てた。
「うわぁ緊張した!まず常務と話すなんて事無いし。
でもやっぱ格好いいよね!
理世!良いこともあったじゃないの」
「良いことじゃないよ。単に注意されただけじゃない。
むしろ駄目な社員って認識されたんじゃ」
「気にしてくれたんだから良いことに決まってるでしょ!」
今日は何でもネガティブに考えてしまう私を励ますように、奈津実が容赦なく私の背中を叩いた。