初恋の糸は誰に繋がっていますか?
歩いていて何か違う音が自分の耳に入ってきた。
耳を澄まして聞けばそれは靴音。
振り向いてみても、後ろには誰もいない。
気のせいかもしれないと歩き出してしばらくすると、また靴音がする。
女性のヒールの音では無い、男性の革靴とかだろうか。
念のためにといつもとは違う道を曲がるとやはり音は付いてきた。
今度は不意打ちをかけるように振り向けば、すっと電柱に誰か隠れた気がした。
ざぁっと血の気が引いたと同時に、バクバクする心臓を押さえながらどうすべきか必死に考える。
このまま自宅に行くのは危ない。それは自宅を知られることになる。
私は肩に掛けた鞄からスマートフォンを取り出すと、握りしめながら回り道をして再度駅方向に向かうことにした。
今も靴音はつかず離れずについてくる。
人気の無い道路にその靴音が異様に響いて、自分の心臓の音と靴音だけが耳に聞こえている気がした。
ここを抜ければ大通り、駅も近いし人も少しはいる。
歩くスピードをあげて走り出すと一気に大通りに出た。
私は覚悟を決めて振り向いた。
だが店も並ぶ広い歩道には何人か歩いていて、そのうちの誰かが付いてきた人かなど全く分からない。