【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 言葉を(にご)すクレマンを見て、アナベルはその村が自分の住んでいた村に違いないと確信する。

 あの焼け方では、作物もなにも燃えてしまっただろう。

 焼かれた村に残っているのは、灰だけだ。

「ちょっと問題が起きてな。もう少しすれば、別の場所にたどりつくはずだ。そのときにうまいもん食わせてやるから、今日のところはそれだけで勘弁してくれ」
「……アナベルが、食べてもいいの? これは、みんなのごはんでしょ?」
「良いんだよ、小さい子が遠慮すんなって。さて、オレらも食うか。それじゃあ、食事の前にお祈りだ!」

 クレマンの言葉で、みんなにスープとパンが行き渡っていることを知った。みんな目を閉じて手を組み、祈りを捧げている。

 アナベルも同じように目を閉じて両手を組み、祈りを捧げた。

 カチャリ、と音が聞こえて目を開けると、クレマンがスープを口にしていた。アナベルもスプーンを持ち、スープを飲む。

 温かなスープが喉を通り、胃の中に落ちていく。

 ほぅ、と小さく息を吐いて、今度はパンを手にした。硬めのパンだ。

「硬いから、スープに浸して食べると良いわよ」

 ミシェルが一口にちぎったパンを、スープに浸して柔らかくしてから口に運ぶ。

 アナベルも真似して食べてみた。スープの水分を含んだパンは、とても食べやすかった。
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