俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
 廊下に出て瀬那ちゃんの所へ向かうと、山内さんや他の秘書さん達も集まっている。
 「すみません、遅くなりました」
 「絆音お疲れ。受付交代するから私達は食事してきていいって」
 「雪原さんは基本的に副社長についていて下さい。先ほど会長もお見えになったので、またご令嬢たちの対応で忙しくなるかと思います」
 「はい、わかりました」
 会場に戻り副社長を探すとまだ白石さんとお話しているので一安心。私達も会長に挨拶をしてから、綺麗に盛り付けられた料理をお皿に取り始めた。
 「絆音って会長とも知り合いだったんだ」
 「知り合いというか...子どもの頃に何度か会った程度だよ。親同士が昔から仲が良かったみたいで」
 「へぇ、だからこの会社入ったの?もしかして特別枠?」
 「ううん、就職は皆んなと一緒だよ。でも、昔からお世話になっていたし少しでも役に立ちたいなと思って。まさか副社長の秘書になるとは思ってもいなかったけど」
 「いいなぁ、社長にも気に入られてるみたいだし。それより副社長は誰かとお見合いが決まってるの?」
 「私の知る限りではないけど...。お見合いなんて打算的な事は嫌いだって言っていたから」
 「でも会長はやっぱりどこかのご令嬢と結婚して欲しいみたいね。ほら、あれ見て?」
 「あ...私ちょっと行ってくるね」
 また少し見ていないうちに、会長が副社長に女性を紹介している。
 あの方で何人目なのかな...?もう声をかけても大丈夫かな?と考えながら近づき、視線の先に移動すると彼は私を見て軽く頷く。
 声をかけてくれという合図だろうと理解し、会長の手前少し気は引けるけれど再び先ほどと同じように声をかけた。
 「会長、申し訳ありませんが急用なので失礼します」
 「待て翔、お前は見合をする気はないのか?どうするつもりなんだ結婚は。次にこの会社を背負っていくのはお前なんだぞ?そして次の世代へと繋げていかなければならない。分かっているのか?」
 「もちろん分かっています。しかし何度も言っていますが俺は政略結婚をするつもりはありません、相手は自分で決めます。行くぞ雪原」
 「は、はい。...よろしいんですか?会長に紹介された方ともお話されなくて...」
 「お前は誰の味方なんだよ。俺に見合いしてほしいのか?」
 「そういう訳ではありませんが...。今の方は背が高くてお綺麗で、二人並んでいる姿がお似合いだなと思ったので...」
 「は?俺はああいう着飾った見た目で好きになる事なんてない。ましてや背が高いとか並んだ姿がお似合いだとかそんな事全く関係ないんだよ」

 そんな話をしながら歩いていると、後ろから来た方と肩がぶつかってしまい、パーティー用に履いてきた少し高めのヒールのせいで躓いてしまった。
 前のめりに転びそうになった私を副社長が抱きとめる形で助けてくれ、身体を離すと跪いて脱げてしまった私のヒールを履かせてくれる。
 その行動に周りの人達からは冷やかすような歓声が飛び「もしかして、あの人がフィアンセ?」という声まで聞こえてくる。
 「い、いえ!私はただの...」秘書ですと言おうとすると、パッと立ち上がった副社長は「ご想像にお任せします」と含みのある笑みを見せた。
 その言葉と笑みに会場が沸きちょっとした騒動となってしまい、慌てて会場の外に出てきた。
 ロビーの椅子に座らされ「さっき足捻っただろ?」とまた跪いて足首を見ている副社長。
 「だ、大丈夫です!副社長は会場に戻って下さい!」
 「少しくらい抜けても問題ない。足痛いんだろ?山内に言っておくから先にタクシーで帰った方が...」
 「いえ!大丈夫です、あと一時間もありませんし最後まで居させて下さい」
 「...本当に大丈夫なのか?」
 「はい、戻りましょう」
 「無理するなよ?そういえば、お前まだ食べてないだろ?座って食べてていいからあんまり動くなよ?」

 会場へ戻ると副社長はまたすぐに声をかけられていたので、私は瀬那ちゃんを探すとデザートをとっている所だった。
 「副社長についてなくていいの?」
 「うん、食べてきていいって」
 「そう、お見送りの時間まで会場内にいていいって」
 「わかった、ありがとう」
 私も少し料理を頂いてから、ケーキをお皿に乗せていると「甘いもの、お好きですか?」とまた声をかけられる。
 一人で食事をしているせいか次々と声をかけられ、座って食べることは難しかったけれど、ケーキやマカロン、焼き菓子やゼリーなど彩り鮮やかなスイーツがたくさん並んでいてとてもわくわくした。
 お話をしながらもそれらを堪能し腕時計をみると、もう少しでお見送りのためエントランスへ降りる時間。
 お皿を片付けていると、慌てた様子で瀬那ちゃんが駆け寄ってきた。
 「絆音、準備があるから急いでエントランスに降りて!山内さんが探してたよ!」
 「え?わかった!ありがとう」
 予定の時間より少し早まったのかな...?
 とにかく、副社長に視線とジェスチャーで離れる事を伝えると、ちらっと腕時計を見て軽く頷いていたので急いでエントランスに降りるため階段を目指した。
 ここは三階だし、私たちはエレベーターを使わないようにしているので奥にある階段を降りようとしたその時...
 トンッと後ろから背中を押されたような感覚のあと足を踏み外した。
 ふわっと身体が浮きスローモーションの様に過ぎる景色の中、咄嗟に手すりに捕まろうとしたけれど間に合わず、落ちる...と目を瞑ったのと同時に身体中に痛みが走る。
 そして踊り場の床に倒れ込むと、頭を打ったのかすぐに意識が混濁し目の前は霞み真っ暗になっていった...
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