俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
 少しぼんやりとしてしまったけれど、副社長の動きを追いかけながらもたくさんの方と言葉を交わす。
 それが一段落すると、上品なお着物に身を包んだ社長の奥様がこちらに歩いてくる。
 「絆音ちゃん久しぶりねー。なんだか少し見ないうちにまた綺麗になっちゃって!」
 「ご無沙汰しております、奥様。お着物とてもお似合いで素敵です」
 「あらやだ、奥様なんて!いつもみたいにおばさんでいいのよ?でもお仕事中ですものね!翔がいつもお世話になっております」
 「お世話になっているのは私の方です、副社長の秘書にして頂いて本当に幸せです」
 「ふふっ、やっぱり絆音ちゃんは可愛いわね!帰国してから類とも会ったのかしら?」
 「はい、一緒にお食事を。類くんも本当にすごいですね、日本でお店を出すなんて」
 「頑張ってるみたいね。類は昔から絆音ちゃんが大好きだから、これからも仲良くしてあげてね?そうだ!今度家に遊びに来て?今エプロン作りにはまってるのよ、絆音ちゃんにも可愛いの作ってあげたいの!」
 「ありがとうございます、楽しみにしています」

 山内さんの視線に気がつき奥様に挨拶をしてから向かうと「副社長の所へ行った方が良いかと」そう小声で言われた。
 つい先ほどまでは取引先の方達と挨拶をしていたけれど、改めて見ると自分の娘を紹介しようとする方達に囲まれている...。
 慌てて副社長の元へ向かうと、笑顔で対応されているけれど私に向ける視線は鋭く目は笑っていない。
 「失礼します」とかき分け「すみません、少しお時間よろしいですか?」と彼に声をかける。
 「わかった、すぐに行く。申し訳ありませんがこれで失礼します」
 華やかな女性達をかき分け私の方へ来ると作り笑顔のまま「お前なに呑気に母さんとお喋りしてるんだよ!助けろって言ったよな?」と私にだけ聞こえる声で言いながら顔を覗き込まれる。
 「申し訳ありません...」
 「接待は山内に任せておけって言っただろ?ちょこちょこ動きすぎだ」
 「すみません、気をつけます」
 「とりあえず一本電話してくるからこれ持っててくれ。いいか、ここで待ってろよ?」
 そう言ってシャンパングラスを渡されたので、それを受け取り会場の端の方で全体を見ながら待っていた。
 煌びやかなシャンデリアに照らされ優雅な演奏が響く中、ブッフェ形式のお料理も皆さん楽しまれているようだし、お酒の提供やお皿やグラスの片付けも間に合っているよう。
 社長と奥様もたくさんの方達とお話をしつつ、お食事も摂れているようなので一安心。
 そう思っていると「ドレス、とてもお似合いですね」と男性に声をかけられた。
 この方は確か...三十八歳という若さで社長に就任したと業界内で話題になっていた三神製薬の白石さんだ。
 「いつもお世話になっております、白石様」
 「堂上副社長の秘書さんですよね?よかったら、デザート一緒に食べませんか?秘書さんも少しくらい休憩しないと。甘い物はお好きですか?」
 「ありがとうございます。副社長からここで待つようにと言われておりますので、すみませんが...」
 「じゃあ僕が取ってきますね!ここで待っていて下さい」とあっという間に行ってしまった。
 すぐに追いかけたいけれど、ここを離れている間に副社長が戻られたら困るし...。
 どうしようとキョロキョロしていると、白石さんはこちらをみてニコッと微笑みいくつかケーキやスイーツをお皿に乗せて戻ってくる。
 「どれがお好きですか?このホテルのチョコレート、美味しいって評判らしいですよ!よかったらこれ...」
 「ありがとうございます、白石社長。あいにく彼女はチョコレートが苦手なので、私が頂きます」といつの間にか後ろにきていた副社長が一つ摘んで口に入れる。
 「あ、堂上副社長...」
 「よろしければあちらでゆっくりお話しませんか?雪原、水川が探していたから行ってこい、あまり離れるなよ」
 「はい、承知しました」
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