ダイヤの片想い

⑥ だもんで



渥美半島の養鶏場に勤めて3ヶ月が経った
相変わらず住込みで仕事に励んでいる
生活にも落ち着きが出てきた
仕事の方も慣れてきて日常業務を熟すにもヘトヘトとした疲労は感じなくなっていた

卵、鶏肉。
食卓で我々の味覚や視覚に嗅覚、触覚においてまで喜嬉に堪能させて頂いている

比内地鶏・薩摩地鶏・名古屋コーチン

ダイヤの従事している養鶏場ではその土地が誇る地鶏は扱ってはいない
スーパーなどで日常的に販売される肉用種をブロイラーと呼び白コーニッシュと言う品種を養鶏していた
採卵種をレイヤーと呼称して白色レグホン種を飼育している


2025/2/8
養鶏場へ入社したのは2024年11月8日だった
長らく無職であったが、3ヶ月仕事を継続することが叶ったのであれば、あることを未来の実行として決めていた
今その未来の地点に辿り着いて、その歩みを一時止めた
働の覚悟に隙を与えない為にスマートフォンは生活費に変えてきた
住込み寮に備え付けられている固定電話の受話器を手に取り右耳に構えた


「もしもし」
「タスイか。俺だがや」
「うん、久しぶりやね」
「元気か?」
「うん元気やで、働いてる?」
「おう、かしわやっちょるよ」
「えらいで、どう?」
「最初はどえりゃあ疲れたけど、慣れてきてやってるよ」
「そうか、良かったやん」
「うん、それ、で、だもんで」
「うん」
「付き合ってください。でら好きだがや」

6度目の告白も失敗した
仕事をすれば認めてもらえると思っていたのに、実らぬ想いがえらいトロクセャアなってしまって、
混迷の果てに仕事を辞めた

家のある名古屋市内へ向かう列車の中で、また甲斐性のない自分に戻ることを自ら諭し戒め、そのまま瀬戸市へ足を向けた

2025/2/8
立春の候

陶磁器の門を叩いた

#HAMIRU
#ダイヤ
#タスイ
#ダイヤの片想い

1.養鶏
2.瀬戸焼

恋の冷石,春の陽光,未だ溶けぬ

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