美形義兄×5! ~人間不信な姫の溺愛生活~
「さて」
ご飯を作ろう。
家に帰って下準備をする。
課題は、新年度に問題集が配られた時に全部埋めたからない。
今日は煮込みハンバーグとポテトサラダだ。
この家の冷蔵庫などの中には何でもそろっている。
肉も魚も粉類も野菜もフルーツもソース類、横の棚には調味料も。
どこかのお店かと思うくらい種類が揃っている。
作ったハンバーグをフライパンに入れて煮込む。
しばらくすると、ピー・・・というお米が炊けた音がした。
同じタイミングでハンバーグもOK。
お皿に取り分けて上にはキノコを、まわりにはジャガイモ、ニンジン、ブロッコリーを。
作って冷蔵庫に入れておいたポテトサラダもお皿にとって、出来上がり。
もう冬だし、明日は鍋でいいかな・・・。
なんてコトを考えながらお皿をダイニングのテーブルに運ぶ。
「ん-・・・ハンバーグの匂いー」
零兄を筆頭に義兄たちが集まってきた。
「お米は自分で」
そういうと、みんなキッチンに行ってお米をつぐ。
「いっただっきまーす」
パチッという音がダイニングに響いた。
「そういえばなんで雫宮はあんなに小食なの?」
毬兄が首をかしげて訊いてくる。
・・・まぁ、話しとくべきだろうか。
「私には・・・」
そう切り出して私は息を吸った。
「兄がいて、小学生の頃の私をかばって死んだ」
知っている鈴兄と零兄は反応を示さずに私を見つめる。
「それからお父さんに虐待されて、ご飯も1日一食、服なんて買ってもらえないから古い服で作り直したりしてた。優しい親戚のおかげでこの学園にも行けてるけど、胃は小さいまま。だから、ほんの少しだけ食べたら1日中たたかえるくらいになって・・・お金の節約にもなってるし、いいかなって」
徐々にみんなの顔が厳しいものに変わってくる。
「・・・なにを、された」
皇兄が訊いてくる。
「毎日、されるコトは違った。殴られる日にけられる日、そのあざが直らなければ学校には行かせてもらえなかった。監禁される日はご飯がなかった。私は壁に鎖でつなげられてて」
その言葉でみんなの顔色が変わった。
「首と腕と足に鎖がついてて、殴られる日は壁に磔にされたりとか」
トラウマにはなっていない。
でも、とてもいい思い出とは言えない。
お前が兄を殺したも同然だと言われれば反論できなくて、反抗しなかった。
「・・・骨折とか、変形とかは」
「ない。でもそろそろ折れるなってところで父は再婚して・・・。私に手を出すコトはなくなった」
『私に』に引っ掛かりを覚えたのか、毬兄は真剣な顔で私に続きを促す。
「できた義姉には、わからない。もう成人くらいだったし、義母とは毎晩やってたみたいだけど、その義母も仕事で忙しかったから・・・もしかしたら裏でなにかやってたかもしれない」
もしかしたら、手を出されていたかもしれない。
それが分かっていながら・・・私は見捨てた。
現実から、逃げた。
今頃離婚してるかもなぁなんて他人事のように思う。
「・・・私は、当主様に拾ってもらえてよかったと思ってる」
「雫宮は・・・」
「わかってる。私が跡取りとしてもらわれたコトくらい。でも、そっちの方がいい。あんな家にはいたくない」
父の声が、まとわりつうような父の声が気持ち悪かった。
私は頑丈な体をしていたらしく、手加減もなく、会うのが嫌だった。
反抗だってもちろんできた。
でも・・・お兄ちゃんが死んだのは、私のせいだから。        
夜ご飯を食べ終わると。
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