あの放課後、先生と初恋。




「で、名波と皆木には今からそれぞれ吹いてもらう。つまり今日はオーディションだ」



メンバーを懸けた、オーディション。

わたしはあれから落合先輩の指導だけでなく、工夫した特訓法を実践していた。


その姿をもちろん綾部先生は見ていただろうし、実際に合奏での変化は部員たちも分かっているはずだ。


わたしはとうとう、この場所にまで立つことができた。



「ふたりと僕以外は背中を向けて座れ」



先生がそんな命令をしたのは、わたしたちのことを“音だけで”判断させるため。

審査をしてくれる部員たちは言われたとおり背中を向け、並べられた椅子に座る。


そしてわたしは名波くんと静かにじゃんけんをして、先攻はわたし。



「じゃあまず、1番からだ。僕が指揮をする」



ゆっくり深呼吸をして、足を開く。
先生に嫌でも指揮をさせるような演奏を。


今は修理に出しているハルト。


手元には無いけれど、ここまでわたしを見守っていてくれて本当にありがとう。

いつもそばにいてくれて、いつも味方でいてくれて。



< 376 / 395 >

この作品をシェア

pagetop