性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
「あれ?おかしいわ。だってお釈迦様は確かお一人だもの…。それに陰陽師なんて…」
類はそこまで喋って、ふと我に帰る。
「え?…」
気づけば、クラスの中は空っぽで先ほどまで晴天だった外の景色は暗闇に包まれている。まるで異世界に飛ばされてしまった様な感覚に類は思わず後ずさる。
「嫌だ…、私、また」
変な場所へと連れてこられてしまったー。
恐怖のあまりその場に立ちすくんだままでいると、耳元でよく聞き慣れた男の声が響く。
「また飛ばされたのかい?」
「覚…」
ヌルリと類の背中から姿を現した怨霊に類は少し安堵する。
「それにしても、あの陰陽師。この私に厄介な呪いをかけたようだ…」
覚は自身の掌を眺めながら、顔を顰める。
「呪い?」
「おや。気づかなかったかい?今の私はあの世とこの世の境でしか君に会えないんだよ?」
確かに最近、覚の姿を現実世界では見かけない。
「お陰で君と出会える回数が減ってしまった」
覚はそう言って、残念そうに類の頬を突っつく。
「そ、そんなことより…、ここはどこ?私また怨霊に引っ張られたの?」
類は気味悪そうに両肩を摩りながら辺りを見渡す。
「…さぁ?どうだろうね。ただこの前の様にはいかないみたいだ」
覚はそう言うと、類を何かから守るように自身の後ろへと誘導する。
「覚?」
「出ておいで。この娘は騙せても、私は騙せないよ」
覚は教室の教卓を鋭く睨みつける。すると、教卓の後ろから奇妙な人影が姿を現した。
「あーあ。残念。人間だけなら騙せたのにな」
まるで、鉛筆で黒く塗りつぶした棒人間のような、なんとも言えない人形をしたそれは禍々しいオーラを纏いながら合成音声のような声を響かせる。
類はその姿に思わず腰を抜かしかける。そのなんとも形容し難いそれは、ただ見ているだけで正気が吸い取られていく様な気がした。
「さ、ささ覚、あ、あ、あれ…」
「君はあまり見ない方がいい。下手すると気が違ってしまいかねないよ?」
覚は後ろで混乱する類にそう告げると、掌に青白い炎を出現させる。
「俺とやろうってか?やめとけよ俺はこの学校で一番強いんだ!」
そのなんとも形容し難いその怨霊は覚に向かって偉そうに声を張り上げる。
「強い?お前の様な下級の霊体が何を言っている」
覚はそう言うと、どこか可笑しそうに微笑む。
「貴様!俺を馬鹿にしてるのか?!この学校で俺に楯突いた奴は皆んな処刑だ!」
「ほう。そうか。それはいい。ならば処刑してみろ」
「なんだと!?」
覚の煽り文句と同時に、怨霊は激昂すると、その身体から黒い線の様な物を引き出し、勢いよく覚と類目掛けて振り下ろす。
ガチャン!!
その黒い線はまるでムチの様にしなると、教室にあった机をいとも容易く叩き割った。
「きゃあ!!!」
類は思わず叫び声を上げるが、覚の放った札によって接触を免れる。
「…この札」
この前の屋敷でもみたその札は、覚と類を守る様に二人の周りをぐるぐると回っている。
「怖がらなくていいよ類。こちらの世界で私以上に強い怨霊は滅多に居ないからね…」
覚はそう言うと、怨霊へと反撃を開始する。しかしその攻撃は何故か容易にかわされてしまった。
「バーカ!んな攻撃で俺を倒せると思ったのかよ!」
「おや。それは失礼ー。」
しかし、覚は何故か楽しそうである。
「んだよ!お前!大したことねぇじゃん!」
「覚!」
なんだか拮抗しているように見える戦闘に、類は思わず覚の名前を叫ぶ。
「なんだい?」
「ほ、本当に大丈夫なの?!」
「大丈夫だよ」
「で、でも、あいつ全然喰らってない!」
「そりゃあ、実態が無いからね…」
類は指の隙間から二人の戦闘を見つめると、幾度となく覚に声をかける。
「じゃ、じゃあどうすれば?!」
元も子もない話をする覚に類は少し腹立たしげに尋ねる。
「君はあいつを消したいのかい?」
「消したいに決まってるでしょ?!」
「じゃあ君が命令するんだ」
「め、命令!?」
覚は敵の攻撃をかわしながら答える。
「そうさ、消したいなら、消えてくれと命令すればいい…」
「わ、私が?!」
いまいち理解できない指示に、類は混乱する。
「もちろん。残念ながら言霊を使えるのは生きた人間だけだからね…」
覚は少し残念そうに呟くと、敵の攻撃をかわしながら再び類の前へと降り立った。
「ありったけの憎しみを込めて叫んでごらん」
覚はどこか怪しく微笑むと、今まさに攻撃を仕掛けてこようとする敵に向かって掌を向ける。
「さぁ、類。あいつを消すんだ」
(私が…、消す?)
「君のありったけの叫びで」
(私の叫びで…?」
「あいつの姿を消し去ってごらん」
覚がそう言い放った次の瞬間、先程まで類の周囲を守る様に浮遊していた札達が姿を消していく。
前方からは敵の攻撃。
このままでは喰らってしまう。
(駄目…)
類はその時、何故か孤独な陰陽師の姿を思い出した。
(光さん…)
そう。彼を一人にしては駄目だ。
何故だか、わからない。
でも、
あの、孤独な男を
人の気持ちを理解できぬ哀れな男を
一人にしては駄目な気がした。
「ッ!!」
そう思った瞬間、類は力の限り叫んだ。
「消えなさい!!!貴方の居場所はここではない!!」
類はそこまで喋って、ふと我に帰る。
「え?…」
気づけば、クラスの中は空っぽで先ほどまで晴天だった外の景色は暗闇に包まれている。まるで異世界に飛ばされてしまった様な感覚に類は思わず後ずさる。
「嫌だ…、私、また」
変な場所へと連れてこられてしまったー。
恐怖のあまりその場に立ちすくんだままでいると、耳元でよく聞き慣れた男の声が響く。
「また飛ばされたのかい?」
「覚…」
ヌルリと類の背中から姿を現した怨霊に類は少し安堵する。
「それにしても、あの陰陽師。この私に厄介な呪いをかけたようだ…」
覚は自身の掌を眺めながら、顔を顰める。
「呪い?」
「おや。気づかなかったかい?今の私はあの世とこの世の境でしか君に会えないんだよ?」
確かに最近、覚の姿を現実世界では見かけない。
「お陰で君と出会える回数が減ってしまった」
覚はそう言って、残念そうに類の頬を突っつく。
「そ、そんなことより…、ここはどこ?私また怨霊に引っ張られたの?」
類は気味悪そうに両肩を摩りながら辺りを見渡す。
「…さぁ?どうだろうね。ただこの前の様にはいかないみたいだ」
覚はそう言うと、類を何かから守るように自身の後ろへと誘導する。
「覚?」
「出ておいで。この娘は騙せても、私は騙せないよ」
覚は教室の教卓を鋭く睨みつける。すると、教卓の後ろから奇妙な人影が姿を現した。
「あーあ。残念。人間だけなら騙せたのにな」
まるで、鉛筆で黒く塗りつぶした棒人間のような、なんとも言えない人形をしたそれは禍々しいオーラを纏いながら合成音声のような声を響かせる。
類はその姿に思わず腰を抜かしかける。そのなんとも形容し難いそれは、ただ見ているだけで正気が吸い取られていく様な気がした。
「さ、ささ覚、あ、あ、あれ…」
「君はあまり見ない方がいい。下手すると気が違ってしまいかねないよ?」
覚は後ろで混乱する類にそう告げると、掌に青白い炎を出現させる。
「俺とやろうってか?やめとけよ俺はこの学校で一番強いんだ!」
そのなんとも形容し難いその怨霊は覚に向かって偉そうに声を張り上げる。
「強い?お前の様な下級の霊体が何を言っている」
覚はそう言うと、どこか可笑しそうに微笑む。
「貴様!俺を馬鹿にしてるのか?!この学校で俺に楯突いた奴は皆んな処刑だ!」
「ほう。そうか。それはいい。ならば処刑してみろ」
「なんだと!?」
覚の煽り文句と同時に、怨霊は激昂すると、その身体から黒い線の様な物を引き出し、勢いよく覚と類目掛けて振り下ろす。
ガチャン!!
その黒い線はまるでムチの様にしなると、教室にあった机をいとも容易く叩き割った。
「きゃあ!!!」
類は思わず叫び声を上げるが、覚の放った札によって接触を免れる。
「…この札」
この前の屋敷でもみたその札は、覚と類を守る様に二人の周りをぐるぐると回っている。
「怖がらなくていいよ類。こちらの世界で私以上に強い怨霊は滅多に居ないからね…」
覚はそう言うと、怨霊へと反撃を開始する。しかしその攻撃は何故か容易にかわされてしまった。
「バーカ!んな攻撃で俺を倒せると思ったのかよ!」
「おや。それは失礼ー。」
しかし、覚は何故か楽しそうである。
「んだよ!お前!大したことねぇじゃん!」
「覚!」
なんだか拮抗しているように見える戦闘に、類は思わず覚の名前を叫ぶ。
「なんだい?」
「ほ、本当に大丈夫なの?!」
「大丈夫だよ」
「で、でも、あいつ全然喰らってない!」
「そりゃあ、実態が無いからね…」
類は指の隙間から二人の戦闘を見つめると、幾度となく覚に声をかける。
「じゃ、じゃあどうすれば?!」
元も子もない話をする覚に類は少し腹立たしげに尋ねる。
「君はあいつを消したいのかい?」
「消したいに決まってるでしょ?!」
「じゃあ君が命令するんだ」
「め、命令!?」
覚は敵の攻撃をかわしながら答える。
「そうさ、消したいなら、消えてくれと命令すればいい…」
「わ、私が?!」
いまいち理解できない指示に、類は混乱する。
「もちろん。残念ながら言霊を使えるのは生きた人間だけだからね…」
覚は少し残念そうに呟くと、敵の攻撃をかわしながら再び類の前へと降り立った。
「ありったけの憎しみを込めて叫んでごらん」
覚はどこか怪しく微笑むと、今まさに攻撃を仕掛けてこようとする敵に向かって掌を向ける。
「さぁ、類。あいつを消すんだ」
(私が…、消す?)
「君のありったけの叫びで」
(私の叫びで…?」
「あいつの姿を消し去ってごらん」
覚がそう言い放った次の瞬間、先程まで類の周囲を守る様に浮遊していた札達が姿を消していく。
前方からは敵の攻撃。
このままでは喰らってしまう。
(駄目…)
類はその時、何故か孤独な陰陽師の姿を思い出した。
(光さん…)
そう。彼を一人にしては駄目だ。
何故だか、わからない。
でも、
あの、孤独な男を
人の気持ちを理解できぬ哀れな男を
一人にしては駄目な気がした。
「ッ!!」
そう思った瞬間、類は力の限り叫んだ。
「消えなさい!!!貴方の居場所はここではない!!」