月とスッポン  一生に一度と言わず
箱根。富士山まで。車で5、6時間。
子供たちのの事を考えれば余裕を持って移動に半日といったところか。今まで行ったことのない未知の領域。
頭の中で計算をする。

「式はいつ?」
「5月ぐらいだと思う。梅雨前にって言ってたから」
「会いたいし、会わせたいなぁ」

翔空が呟く。

「式は5月の第四土曜日です。参加して頂けるになら、こちらにご連絡下さい」

差し出された名刺を「調整してみます」と翔空が受け取り、そのまま私へ回ってくる。

「グレートフォレストホールディングス!」

何それ?おいしいの?
そんな顔でこっちを見ないで!

「翔空」と呼んでも首を傾げるだけ。
可愛いけど、龍平も真似して首を傾げてものすごく可愛いけど

「コートとか汚れてませんか?クリーニング代」

鞄から財布を取り出す。

「汚れていませんので、気にしないでください。私は翔空君のお兄さんですから」

そういう問題ではない気がする。
『お兄さん』というフレーズが気に入ったのか、支払いも『お兄さんだから』で終わられた。
いいのだろうか?

すっかり弟モードになってしまった翔空。
飽きてしまいぐずり出した龍平とお眠りモードの大我。

両手いっぱいの私に「今日の事は気にしないでください。式も含めて。参加出来たら嬉しいですけど」茜は言った。

ドタバタと帰り支度をしながらも、申し訳なさそうにそして嬉しい顔をしてても少し寂しそうに笑う茜の顔が、私の頭に残る。
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