月とスッポン  一生に一度と言わず
帰りはいつもあっという間
翔空と現状のすり合わせを終え、お別れかと思っていたのに、
なぜか一緒に猿田彦神社へ向かっている、大河が龍平を肩車しながら。

「猿田彦神社は俺の崇敬神社なんだよ」
「すうけい?」

「そっ。行きつけの神社を氏神様とか崇敬神社とか言うんだよ。
 氏神様は住んでる地域の守り神で、崇敬神社は個人的に崇拝している神社の事」
「ほぅ。詳しいね」

「これでも宮大工の端くれだから。基本的な事は嫌でも分かるさ。
で、猿田彦神社は節目の時だけじゃなくて時間がある時は必ず行く崇敬神社ってわけ」
「よく行く神社」

「別に家の近くじゃなくても、心の拠り所だから行くと落ち着く神社が崇敬神社だと俺は思ってるけどね」

色々な所へ行って、どこもかしこも神聖だったけど、特別な一社。
なんか羨ましいかった。

「いろんなところ回ってるならじきに見つかるんじゃね?自然と何度でも行きたいって思えば、そこはお前の崇敬神社だと俺は思うよ」

それに

「猿田彦大神を祀る全国二千余社あって、本宮は猿田彦神社ではなく、鈴鹿にある椿大神社だしな。
全国どこにでもあるってわけだ」
と続ける。

「つまり?」
「お気に入りの神社を見つけるのもよし、推し神巡りするのもよしなんじゃね」

「推し神って何」と笑いながら突っ込めば

「八幡神社は全国に5000近くあるし、稲荷は全国に三万以上」
「だから?」
「ここの神社って決めつけないで、行く先々で会いに行けばいいって事」

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