「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「お父さん、巧さんと会えていないんでしょう?」

 父の都合がつかなくて電話しかしていないと聞いている。

「電話はしたんだけどな。もう一度聡子や美月と向き合うべきだと諭されたよ」

 まさかそんな話をしていたなんて。

 両親がやり直すきっかけを与えたのが巧さんだと知った瞬間、彼の思い遣りの強さに胸が締め付けられて苦しくなった。

 本当にどこまで素敵な人なの……。

「巧は父さんが後見人を務めていた時に、『もう二度と大切な人を失いたくない。家族を作るのが怖い』と言っていたんだ。恐怖心を乗り越えるほどの愛情を、美月には持っているんだろうな」

 さらさらと流れていくような口調で重大な話をされて、頭で理解して心に取り込むのに時間が必要だった。

 なにも言えず、かといって沈黙を作りたくもなかったので、「ちょっとトイレ」とその場から逃げる。

 トイレに入ってスマートフォンを握り締める。頭の芯まで響き渡る心臓の音しか聞こえない。

 ちょっと落ち着こう。動揺しすぎている。
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