結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
暗鬱だ。藤原さんや他の社員さんも「戸樫さんは悪くない」と慰めてくれたが、騒ぎになって皆に迷惑を掛けたのは事実だった。ただでさえ忙しくてピリピリしていたのに、余計な仕事を増やしてしまった。
きちんと第三者を入れて話し合いをすればよかった。早く終わりにしたくて逃げてしまった。でも、あのときは辛くて、あれが私の限界だった。お金に罪はないのに、もらっても気分が悪いし、とても困る。
永遠子は、「柴田、あいつ終わりなのでは」とさすがに同期を心配していた。
だが、騒動の翌日、蒼白になっている上司に呼ばれて私は絶句した。
「本当にすまない。何度も繰り返し説明して、事実は伝えたんだが……」
「正社員登用は白紙……ですか。そうですか……」
上司にも非はないが、恨みたくなってしまった。
騒ぎを聞いた役員からは、私が金銭トラブルを抱えていると思われていたらしい。それは誤解だと上司が説明して、理由はきちんと伝わったにも関わらず、「その女は例の派遣なんだろ? そういう騒ぎになるなんて面倒だし、やっぱりやめとこうよ」と一部の役員が言い出したらしい。
上司は明言しなかったが、かつて「結婚したら辞めちゃうんじゃない?」と言っていた人なのだろう。