結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 起き抜けに慌ててキッチンへ直行したから、勿論お化粧なんかしていない。髪もボサボサなのが恥ずかしくて、手ぐしでなおしながら真正面から夫を見上げた。東梧さんが子供のようにニコニコと笑って言った。

「今日も可愛い」
「えっ? えっっ??」

 言われたことが分からなくて混乱していたけど、東梧さんは嬉しそうに笑っている。からかっているわけではなさそう。ということは、本気でいつも可愛いと思ってくれるんだ。
 自覚したら照れてしまって、両手で顔を隠して俯いた。
 どんな顔したらいいんだろう! こういうの慣れてないからー!

「さあ、朝食にしましょう。妻に見とれていたら遅刻してしまいます」
「は、はいぃ……」

 こんな私を可愛いって言ってくれるのは、東梧さんだけだろうな……

 新婚生活は、想像よりも甘すぎて戸惑う。それに、考え方の違いに気づかされることも多かった。でも毎日が楽しくて順調だった。
 そして結婚式の準備も順調だった。
 私は一度、準備までは経験しているし、東梧さんはこれまでに親戚や友人の結婚式に何度も列席して、色々な式を見てきたから、「こうしたい」「これはしたくない」というイメージが明確で、揉める要素がほぼなかった。
 このまま平穏に結婚式を迎えるのだと思っていた。
 あの人と再会するまでは。
 ……そこから少しだけ、準備が慌ただしくなってしまった。


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