結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
大丈夫と言いつつも、やっぱり夜は怖いので、着いてきてもらえるなら安心。
外に出ると空が白かった。不夜城新宿の街の明かりが反射して、雲がぼんやり光っている。でも、このマンションは新宿御苑のすぐそばなので、都心とは思えないくらいに静かだ。
歩きながら、八木沢さんはいつもどこで買い物をしているのか聞いてみた。
徒歩十分の距離に、大きなスーパーマーケットがあるらしい。ただ、営業時間は朝十時から夜十一時までなので、いまはすでに閉まっている。
コンビニもいくつかあるし、ディスカウントショップもある。JR新宿駅方面へ歩けば百貨店もある。便利だ!
買い物をすませ、コンビニの前で私は八木沢さんにミネラルウォーターのペットボトルを差し出した。
「東京駅で頂いた、お水のお返しです」
私が笑って見上げると、彼は一瞬驚いた表情を見せたが、ふっと笑って受け取ってくれた。それが嬉しくて、ちょっと照れてしまう。
急に恥ずかしくなって、視線を下げたまま、マンションの方向に一歩踏み出し瞬間、八木沢さんに腕を引かれた。
進もうとしたのに引っ張られたから、反動で思い切りよろけてしまった。
支えてもらったので転ばなかったけど、急に抱きしめられたのかと思って、体が強ばった。
突然何? と叫びそうになったとき、目の前を猛スピードの軽自動車が走り抜けて行ったので、思わず短い悲鳴をあげてしまった。