結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
恋愛の終止符
目覚めた私の視界には見知らぬ天井があった。手を伸ばしても誰もいないし、ここがどこだかわからない。手探りでカーテンを開けて、ようやく新宿の新居だと思い出した。
珍しく熟睡できたのか、最近感じていた怠さが消えていた。
備えつけられていたのは遮光カーテンで、しかも窓を開けても目の前はマンションの外壁なので、直射日光は入ってこない。確かに日当たりは良くないけど、風通しはいいので湿気は少ない。
九畳の洋室が、私の居住空間。
いまあるのは大きな旅行用の鞄ひとつだが、土曜日に荷物を入れても十分広く使えそうだ。
ドアを開ければすぐにリビングで、ダイニングテーブルもソファーもある。……骨董品に囲まれているけれど。
昨夜、八木沢さんと一緒に行ったコンビニで茶葉を買ったので、有田焼の茶器を使わせてもらうことにした。急須と湯飲みの揃いで、花柄がとても可愛い。
この部屋にある骨董品は、相続税算出のために一度全て鑑定してあるそうだ。その際、かなり高額だったものは相続せず、美術館や博物館に寄贈したと聞いた。八木沢さんのおじい様は、きっと目利きだったのだろう。
八木沢さん自身は、骨董品に興味がないらしい。「なんでも使っていい」とは言われたけれど……あまりに高価過ぎるものは、さすがに気が引ける。