結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
彼氏と彼女?
八木沢さんと私は、ただの「大家と店子」だったはずが、いつの間にか「彼氏と彼女」の関係になってしまった。
煽った張本人である槙木さんが帰ったあと、エントランスで八木沢さんに聞いてみた。
「本当にいいんですか?」
「何がですか?」
「わ、わわ私が彼女……で、いいんですか?」
照れてしまって、どんな顔をしていいのかわからない。
でも、八木沢さんはいつも通り、穏やかに笑っていた。
「見合い話にはうんざりしていたので断りやすくなります。したくないと言っても、強引に話を進められる場合もあるんですよ。お見合いしてから『結婚するつもりがない』と言うと相手を怒らせますので」
「まあ、それは怒りますよね」
「お互い、結婚を前提としないお付き合いなら安心です」
私の「彼氏」のはずだが、八木沢さんの態度は何も変わらなかった。連絡頻度も、なーんにも変わらない。
唯一の約束は「お互いの時間と空間を尊重する」こと。それだけ。
束縛しない、自分のことを優先、無理に相手にあわせない……当たり前といえば当たり前のこと。
「つまり、勢いで付き合い始めたんですか。おめでとうございます……?」
「いい、自分でもどうかしてると思う」
私から永遠子を食事に誘って、「真臣からお金を取り返したいが、連絡は取りたくない。どうしたらいいか」という相談をしていたはずが、気づけば八木沢さんの話になっていた。
永遠子の祝福が疑問形だったのも、仕方ない。