八限目は朝葉学園図書館で
四話 入学後編
花子さんに手を引かれて、図書室の奥の壁の前までくる。
「えっと、どうやって行くの?ここ、壁だけど」
日那の言葉に二人がにいっと口角を上げた。
「え?何その笑み。なんか腹立つんだけど。」
「お前は何も分かんないんだなー、ほんと」コウが馬鹿にしたように言うのでムッとする。
「こーするんだよっ」そうコウが言った次の瞬間にはコウは壁の中に入っってしまった。
いや、コウの体は正確には全て入ったわけではなく上半身だけをのぞかせている。壁から。
「え、やば」あまりにも突然すぎて私の中の語彙が一瞬にして無くなった。
「え、何それ。」壁と一体化したコウの下半身とこちらをニコニコと見つめている顔がついた上半身。
「私も入ろーっと」そう言って花子さんは私の手をパッと放してコウと同じようにスッと壁に入って顔をのぞかせる。
「さ、日那。次はお前だけなんだから早くしr、、、、」「無理だよ、バカ。私人間だよ。頭叩くよ?マジで。」
無理難題をいってくる二人にキレる。
「大丈夫だって。一回やってみて」花子さんの言葉にちょっとだけ自分の中の好奇心が芽生えた。
本当に入れるかもしんないなら、ちょっとやってみよう。
ゴン!
鈍い音が盛大に鳴る。「痛った!」私が壁に入ろうと一歩を踏み出すとしっかり壁に遮られた。
「ちょっと、どこが大丈夫なわけ?全然大丈夫じゃないんだけど!」
日那の頭には直径3センチくらいのたんこぶができている。
頭を押さえる日那を見てコウと花子さんが「やっぱ無理かー」と残念そうに言う。
「やっぱって何よ」キッと日那が二人をにらみつけるとコウが何食わぬ顔で「いやーオバケ専用の入り口から入れるかなーって思ってさー」と笑う。
「え?ってことは、人間用の入り口もあるって事?」日那が尋ねると花子さんがうなずく。
「うん、あっちー」花子さんが指さした方向には小さいけれど確かに扉らしきものがある。
ちょうど日那くらいの身長の子がかがんで入れるくらいのスペースだ。
「あるのかよ!!!」思わず口調が荒くなってしまった。日那の悪い癖だ。
「え、じゃあ、あんた達はわざわざ私で実験したって事?安全にそっちの学校に行ける道があるのに?」
二人は満面の笑みで強烈な一言をぶちかました。
「正解ー!」
あまりにもクソすぎる。こいつらにまともを求めた私が馬鹿だった。
心の中で「絶対、潰す。」と思いながら日那は扉の方へと向かう。
日那がおそるおそる壁に力を入れるとキイという音とともに扉が開く。
中をくぐって立ち上がると思わず声が出る。「わあっ」
綺麗に整理された木目調の本棚は螺旋階段で繋がった二階にまで広がっている。まるでおとぎ話に出てくる魔法のお城みたいだ。
「ここが私たちの学校!絨蓮高校でーす!」花子さんが誇らしそうに胸をそらして言う。
「図書館だよね、、、、。すごい。こんなにかっこいいんだ。」
「でしょ!?いいよねー、ここ。人間界とも行き来できるしー。さすがオバケの名門校!」花子さんの言葉に少し疑問が浮かぶ。
「てことは、人間があの扉を通ってオバケたちの事を知らずに来ることもできるの?」私が聞くとコウが答える。
「いーや、こっち側の許可が無いと扉を開けてもただの水道管にしかなんねえ。だから部外者は入れないんだ。」
へー、そんな感じなんだ。セキュリティ凄いな。まあ、名門校ならそりゃそうか。
オバケの中での名門の評価とかが人間と同じ感じなのかはよくわかんないんだけど。
でも、こんなに立派な図書館はめったにないと思う。古風だけどよく海外の図書館特集でやる王立図書館とかにも引けを取らない。
「こっちが私たちのクラスだよー」花子さんとコウが歩き出す。
私が出てきた扉とは真逆の扉を開けると長い廊下があって、その先に階段が見えた。
「ここは二階で、クラスは3階なんだ」と、コウが教えてくれた。
廊下を歩きながら私は花子さんに質問した。「オバケが読む本ってどんななの?」
「うーん、日那達が読む本とあんまり変わらないと思うよ?例えば黒魔術で呼び出された悪魔が主人公のお話とか、生きている恋人を呪った作家さんのエッセイとかまあそんな感じだしー」
「いや大分違うよ?そんな内容の本、私初めて聞いたわ。」
私がツッコむと花子さんはのほほんとした様子で答える。
「ジャンル的には一緒だよー」
あ、そっか。物事をとらえてる視点が違うって事か。なるほど。
階段を上がると沢山の教室が並んでいた。「俺らはこっち」そう言ってコウが指さすクラスを見る。
「特級クラス、、、?ってどんなクラス?」私が聞くと花子さんが説明を始める。
「私たちの学校はオバケたちが持ってる能力でクラス分けされてるんだー。その一番上が特級クラスなんだー」
ってことは、コウと花子さんって結構凄いんじゃ、、、?
「着いたぞ。」ハッとして顔を上げるともう特級クラスの目の前だった。
過去を思い出して急に緊張する。転校なんていいものじゃない。怖い。呼吸が荒くなって手が震える。やだこんなの。まだ残ってる。
目を瞑っていると自分の両手が何かに包まれていく。暖かい。
目を開けると花子さんとコウが私の手を握ってくれていた。
「手、冷てえ」「そお?コウが熱くなってるだけじゃない?」「は!?何言ってんだよ!花子!」
こんな私の様子を見ても先ほどと変わらない二人に心の中で壊れていた物が少しだけつながった気がした。
「ねえ」言い合いをしている二人に声をかけると両者ともこちらを見つめた。
二人とも綺麗な目だ。この目はかっこいい。あの日のウエディングドレスよりずっと。
「ありがとう」私の言葉に二人は少し驚いた後、笑顔になった。それが返事のような気がした。もう、行ける。
からりとクラスの扉を開けると目の前には小さい頃本で読んだオバケたちがこちらを見ている。
好奇心に溢れた目も多い。でも、今はいいんだ。それで。あの頃にはなかったものが私にはある。
教壇にはジン先生がにっこり微笑んで立っていた。「自己紹介からお願いできますか?」ああ、優しい声色。
顔は人体模型だからやっぱり少しビビるけども。
私は先生隣に立って自分の名前を黒板に書いて、前を見る。
花子さんが手を振っているのが見えた。コウもこちらを見て大丈夫だとでも言うようにうなずいている。
ふう。息を吐いてお辞儀をする。「深山日那です。よろしくお願いします。」
「えっと、どうやって行くの?ここ、壁だけど」
日那の言葉に二人がにいっと口角を上げた。
「え?何その笑み。なんか腹立つんだけど。」
「お前は何も分かんないんだなー、ほんと」コウが馬鹿にしたように言うのでムッとする。
「こーするんだよっ」そうコウが言った次の瞬間にはコウは壁の中に入っってしまった。
いや、コウの体は正確には全て入ったわけではなく上半身だけをのぞかせている。壁から。
「え、やば」あまりにも突然すぎて私の中の語彙が一瞬にして無くなった。
「え、何それ。」壁と一体化したコウの下半身とこちらをニコニコと見つめている顔がついた上半身。
「私も入ろーっと」そう言って花子さんは私の手をパッと放してコウと同じようにスッと壁に入って顔をのぞかせる。
「さ、日那。次はお前だけなんだから早くしr、、、、」「無理だよ、バカ。私人間だよ。頭叩くよ?マジで。」
無理難題をいってくる二人にキレる。
「大丈夫だって。一回やってみて」花子さんの言葉にちょっとだけ自分の中の好奇心が芽生えた。
本当に入れるかもしんないなら、ちょっとやってみよう。
ゴン!
鈍い音が盛大に鳴る。「痛った!」私が壁に入ろうと一歩を踏み出すとしっかり壁に遮られた。
「ちょっと、どこが大丈夫なわけ?全然大丈夫じゃないんだけど!」
日那の頭には直径3センチくらいのたんこぶができている。
頭を押さえる日那を見てコウと花子さんが「やっぱ無理かー」と残念そうに言う。
「やっぱって何よ」キッと日那が二人をにらみつけるとコウが何食わぬ顔で「いやーオバケ専用の入り口から入れるかなーって思ってさー」と笑う。
「え?ってことは、人間用の入り口もあるって事?」日那が尋ねると花子さんがうなずく。
「うん、あっちー」花子さんが指さした方向には小さいけれど確かに扉らしきものがある。
ちょうど日那くらいの身長の子がかがんで入れるくらいのスペースだ。
「あるのかよ!!!」思わず口調が荒くなってしまった。日那の悪い癖だ。
「え、じゃあ、あんた達はわざわざ私で実験したって事?安全にそっちの学校に行ける道があるのに?」
二人は満面の笑みで強烈な一言をぶちかました。
「正解ー!」
あまりにもクソすぎる。こいつらにまともを求めた私が馬鹿だった。
心の中で「絶対、潰す。」と思いながら日那は扉の方へと向かう。
日那がおそるおそる壁に力を入れるとキイという音とともに扉が開く。
中をくぐって立ち上がると思わず声が出る。「わあっ」
綺麗に整理された木目調の本棚は螺旋階段で繋がった二階にまで広がっている。まるでおとぎ話に出てくる魔法のお城みたいだ。
「ここが私たちの学校!絨蓮高校でーす!」花子さんが誇らしそうに胸をそらして言う。
「図書館だよね、、、、。すごい。こんなにかっこいいんだ。」
「でしょ!?いいよねー、ここ。人間界とも行き来できるしー。さすがオバケの名門校!」花子さんの言葉に少し疑問が浮かぶ。
「てことは、人間があの扉を通ってオバケたちの事を知らずに来ることもできるの?」私が聞くとコウが答える。
「いーや、こっち側の許可が無いと扉を開けてもただの水道管にしかなんねえ。だから部外者は入れないんだ。」
へー、そんな感じなんだ。セキュリティ凄いな。まあ、名門校ならそりゃそうか。
オバケの中での名門の評価とかが人間と同じ感じなのかはよくわかんないんだけど。
でも、こんなに立派な図書館はめったにないと思う。古風だけどよく海外の図書館特集でやる王立図書館とかにも引けを取らない。
「こっちが私たちのクラスだよー」花子さんとコウが歩き出す。
私が出てきた扉とは真逆の扉を開けると長い廊下があって、その先に階段が見えた。
「ここは二階で、クラスは3階なんだ」と、コウが教えてくれた。
廊下を歩きながら私は花子さんに質問した。「オバケが読む本ってどんななの?」
「うーん、日那達が読む本とあんまり変わらないと思うよ?例えば黒魔術で呼び出された悪魔が主人公のお話とか、生きている恋人を呪った作家さんのエッセイとかまあそんな感じだしー」
「いや大分違うよ?そんな内容の本、私初めて聞いたわ。」
私がツッコむと花子さんはのほほんとした様子で答える。
「ジャンル的には一緒だよー」
あ、そっか。物事をとらえてる視点が違うって事か。なるほど。
階段を上がると沢山の教室が並んでいた。「俺らはこっち」そう言ってコウが指さすクラスを見る。
「特級クラス、、、?ってどんなクラス?」私が聞くと花子さんが説明を始める。
「私たちの学校はオバケたちが持ってる能力でクラス分けされてるんだー。その一番上が特級クラスなんだー」
ってことは、コウと花子さんって結構凄いんじゃ、、、?
「着いたぞ。」ハッとして顔を上げるともう特級クラスの目の前だった。
過去を思い出して急に緊張する。転校なんていいものじゃない。怖い。呼吸が荒くなって手が震える。やだこんなの。まだ残ってる。
目を瞑っていると自分の両手が何かに包まれていく。暖かい。
目を開けると花子さんとコウが私の手を握ってくれていた。
「手、冷てえ」「そお?コウが熱くなってるだけじゃない?」「は!?何言ってんだよ!花子!」
こんな私の様子を見ても先ほどと変わらない二人に心の中で壊れていた物が少しだけつながった気がした。
「ねえ」言い合いをしている二人に声をかけると両者ともこちらを見つめた。
二人とも綺麗な目だ。この目はかっこいい。あの日のウエディングドレスよりずっと。
「ありがとう」私の言葉に二人は少し驚いた後、笑顔になった。それが返事のような気がした。もう、行ける。
からりとクラスの扉を開けると目の前には小さい頃本で読んだオバケたちがこちらを見ている。
好奇心に溢れた目も多い。でも、今はいいんだ。それで。あの頃にはなかったものが私にはある。
教壇にはジン先生がにっこり微笑んで立っていた。「自己紹介からお願いできますか?」ああ、優しい声色。
顔は人体模型だからやっぱり少しビビるけども。
私は先生隣に立って自分の名前を黒板に書いて、前を見る。
花子さんが手を振っているのが見えた。コウもこちらを見て大丈夫だとでも言うようにうなずいている。
ふう。息を吐いてお辞儀をする。「深山日那です。よろしくお願いします。」