失くしたあなたの物語、ここにあります
雑誌とは、タウン情報誌『ミックス』のことだろう。
「あの雑誌がどうかしたの?」
「葵さんは気づかなかった? 藤井渚さんって人、うららに恋してるみたいだった」
「あ、うん。そうだね。そんな気がしてる」
藤井さんは物腰の柔らかい青年で、強い主張はしない雰囲気を持っていたが、うららに対する気持ちはにじみ出ていたように思う。
「藤井さんはあの雑誌をきっかけにうららに出会って、ずっと今まで恋してるのかなって思ってさ」
「そう見えたよね」
だから、天草さんも思い出したいのだろうか。初恋の人との思い出を。初恋の人をずっと好きでいたんだって確証を得るために。
「でもさ、うららは言ってたよ。藤井さんには大学時代、恋人がいたって」
「そうなの? じゃあ、藤井さんはうららちゃんが好きじゃないのかな」
「いや、好きだと思うよ。今はうららが好きなんだと思う。きっと出会ったときも好きで、離れてる間にその恋心は薄まったけど、やっぱり好きな気持ちは消えてなかったんじゃないかな」
まるで、藤井さんの気持ちがわかってるみたいに言うのだ。
「天草さんもそういう恋をしてるの?」
「あの雑誌の中にはずっと、藤井さんの恋心が記憶されてたんだろうな」
質問には答えてくれない。
「どれだけ時を刻んでも、雑誌の中の記憶は当時のままってこと?」
「うん。そう思ったらさ、なんていうか、俺ももしかしたら思い出してもらえるかもしれないって思ったんだ」
思い出してもらえる? 天草さんが思い出すのではなく?
何がなんだかわからない。恋岩には初恋の人との恋の記憶があって、それに触れたら、眠っていた記憶が動き出すとでも信じているのだろうか。
「初恋の人が思い出してくれるといいね」
何を思い出すのかはわからないし、本心かどうかもわからない励ましを沙代子は口にした。
そんなことあるわけないと思いつつ、六坂の神様がいたずら心をおこしてくれるかもしれないとも、複雑に絡み合う感情で思うのだった。
「それこそ、神頼みなんだけど」
天草さんも同じように感じているのだろう。苦笑するが、試してみたい気持ちに嘘はないようだ。確かな足取りで、恋岩に並ぶ列の最後尾に向かって歩き出した。
「あの雑誌がどうかしたの?」
「葵さんは気づかなかった? 藤井渚さんって人、うららに恋してるみたいだった」
「あ、うん。そうだね。そんな気がしてる」
藤井さんは物腰の柔らかい青年で、強い主張はしない雰囲気を持っていたが、うららに対する気持ちはにじみ出ていたように思う。
「藤井さんはあの雑誌をきっかけにうららに出会って、ずっと今まで恋してるのかなって思ってさ」
「そう見えたよね」
だから、天草さんも思い出したいのだろうか。初恋の人との思い出を。初恋の人をずっと好きでいたんだって確証を得るために。
「でもさ、うららは言ってたよ。藤井さんには大学時代、恋人がいたって」
「そうなの? じゃあ、藤井さんはうららちゃんが好きじゃないのかな」
「いや、好きだと思うよ。今はうららが好きなんだと思う。きっと出会ったときも好きで、離れてる間にその恋心は薄まったけど、やっぱり好きな気持ちは消えてなかったんじゃないかな」
まるで、藤井さんの気持ちがわかってるみたいに言うのだ。
「天草さんもそういう恋をしてるの?」
「あの雑誌の中にはずっと、藤井さんの恋心が記憶されてたんだろうな」
質問には答えてくれない。
「どれだけ時を刻んでも、雑誌の中の記憶は当時のままってこと?」
「うん。そう思ったらさ、なんていうか、俺ももしかしたら思い出してもらえるかもしれないって思ったんだ」
思い出してもらえる? 天草さんが思い出すのではなく?
何がなんだかわからない。恋岩には初恋の人との恋の記憶があって、それに触れたら、眠っていた記憶が動き出すとでも信じているのだろうか。
「初恋の人が思い出してくれるといいね」
何を思い出すのかはわからないし、本心かどうかもわからない励ましを沙代子は口にした。
そんなことあるわけないと思いつつ、六坂の神様がいたずら心をおこしてくれるかもしれないとも、複雑に絡み合う感情で思うのだった。
「それこそ、神頼みなんだけど」
天草さんも同じように感じているのだろう。苦笑するが、試してみたい気持ちに嘘はないようだ。確かな足取りで、恋岩に並ぶ列の最後尾に向かって歩き出した。