失くしたあなたの物語、ここにあります
『前の方が中程までお進みになりましたら、次の方は速やかに振り返らずお進みください』
恋岩占いの入り口にある立て看板には、墨で注意事項が手書きされていた。
何かのアトラクションみたいだ。沙代子は内心そう思いながら、前方を楽しそうに歩いていく女の子たちの背中を見送ると、先が見えない踏み固められた道を眺めた。
「普通の歩幅で行けるのかなぁ」
恋岩がどのあたりにあるのか、全然見当もつかない。
「なるべく大きな歩幅がいいかもね」
「天草さんは恋岩の場所、知ってるの?」
「十八歩で行ったことはないよ」
そう言いながら、天草さんと同時に足を踏み出す。
彼が初恋の人と出会ったのは、小学6年生のとき。あの頃はこうした立て看板はなくて、十八歩で近づく占いとは関係なしに大岩の周囲を駆け回っている子どもたちがたくさんいた。天草さんもそのひとりだったのだろう。
「いち、に、さん、し」
歩数を間違えないように数えながら、一歩ずつ丁寧に進む。なるべく大股で歩こうとするが、ワンピースの裾が邪魔をして、天草さんの方が一歩先に行ってしまう。
「はち、きゅーう。あとどのくらい?」
そろそろ大岩の真横あたりに来てるはず。そう思って、先にいる彼に聞く。
「あと半分くらいだと思う。俺の足でちょうどいいぐらいかなぁ」
「じゃあ、私、足りないじゃない」
そう言うと、天草さんはおかしそうに笑って、さらに進んでいく。
「じゅうに。あ、あれかな?」
前方に縦長の岩が見える。