東雲くんは【平凡】がわからない!
理想と【現実】
放課後。
今日はこれから東雲くんに校内を案内してもらう。

ちょっと憂鬱かもしれないけど…。
これは東雲くんが悪いわけじゃない。わたしの問題だ。


ホームルームが終わり、ざわざわうるさい教室。カバンに荷物をまとめたあたりで東雲くんが声をかけてきた。

「……若葉さん、もう行けそう?」

「うん。大丈夫。
あ、そうだ東雲くん。校内案内だけど光井さんも一緒でもいい?一緒に来てくれるってことになって…」

「光井さん?もちろん。
若葉さん、もう友達できたんだ。良かったね」

ニコーッ。
まるで自分のことのように嬉しそうな笑顔。
急に友達も連れていきたいなんて気を悪くしないか心配だったけど。
東雲くん、本当にいい人なんだよね。

クラスのみんなは彼のこんなところも知った上で、避けているんだろうか。


「若葉さん、おまたせ」

光井さんがわたしたちの席まで来てくれた。
東雲くんと「よろしくね」と挨拶を交わしている。
光井さんはおそらく柳さんたちほど東雲くんを嫌ってはいないようだ。

…とりあえず、これで無事に全員そろった。
東雲くんは魔術書を小脇にかかえて歩き出す。

「じゃあ、行こうか。とりあえずこの校舎からでいいかな」

「あ、うん。よろしくお願いします」

「了解!」

東雲くんについていくように教室を出る。 瞬間、柳さん達が教室に残っているのが見えた。

…気のせいかな。
こちらを見て笑っているように思えた。
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