東雲くんは【平凡】がわからない!
「あ!わ、わたしたちは大丈夫!よければ美術部行って」

「うん。……そうだ、武道室を案内したらそっちに行くから、そしたら若葉さんに美術部を案内してあげてよ」

東雲くんの提案に、光井さんがホッとしたような表情を浮かべる。

「あ、ありがとう。じゃあ、ちょっと行ってくるね。ごめんね」

そう頭を下げると足早に美術室へと駆けていった。

「じゃ、行こうか若葉さん」

「うん……。東雲くんって優しいね」

「え!ええ!?そ、そうかな!ど、どど、どうしたの若葉さん?」

何気なく言ったことに意外にもすごく動揺する東雲くん。
あまり褒められ慣れていないのかもしれない。

「どうしたってことはないけど。昨日からずっと親切にしてくれているし……」

「別に、その、普通だよ…!ほら、行こっ」

照れたように笑う東雲くんは、顔もちょっと赤い。
そんなに反応されるとは思わなかった。
何だかわたしもちょっと恥ずかしくなりながら東雲くんについていく。

後から覗くように見た東雲くんの横顔はとても良く整っている。
柳さんたちも顔だけはいい…みたいなこと言ってたな。
綺麗な顔に、親しみやすい優しい性格。
男子にも女子にも人気出そうだけど…… 

小脇に抱えられた魔術書に目が行く。
趣味がちょっと変わっているというだけでこうも避けられるものなのか。

……いや、そういうものなのだ。
わたしがそうだったんだから。

東雲くん自身がいい人でも彼の趣味は異質。
異質なものは避けられる。
だから、平凡でいなくちゃならないの……


「若葉さん、危ない!」

「えっ」

物思いにふけっていたからか、反応が遅くなった。
サッカー部が蹴ったボール。
方向が狂ったのか、コースを大きくハズレこちらに迫ってきていた。

「きゃっ!」
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