繋いだ手は離さない
 二人揃って眼下に広がるいい景色を眺め出す。


 ボクたち二人は町を見下ろしながら、


「こういうのも案外いいね」


「あたしも今、そう思ってたの」


 と言い合った。


 ボクたちは夕暮れ時まで景色を見つめていた。


 夜になり、車へと戻って、運転席に座ったボクがエンジンを掛ける。


 大学入学を機に母から買ってもらっていた車だから、小まめに手入れしながら乗るつもりでいた。


 車で山を降りて、安全運転でそれぞれの部屋へと戻る。


 ボクが愛理香のアパートに車を横付けすると、彼女がそっと、


「純平、好きよ」


 と言って、ボクの唇に自分のそれをそっと重ね合わせてきた。

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