《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!

Prologue──*



ムーンライトノベルズにて
TL版『波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!』連載に伴い、カクヨム版本編もR15感強め、改題のうえ加筆修正いたします。
Prologue(3)はギリギリの描写を含みますので苦手な方はご注意ください。


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 地を埋め尽くしていた敵の騎士や兵士が一瞬のうちに吹き飛ばされ、まるで蜘蛛の子を散らすように大地に散った。
 或る者は枯葉のようにカラカラと宙を舞い、或る者は圧倒的な風圧によって顔面ごと身体を地表にを叩きつけられ身動きが取れずにいる。敵国の数多の馬が足を折って倒れた。

 漆黒の甲冑に身を包んだ長身のレオヴァルトが振り下ろしたばかりの大剣からは、鈍色の光が迸っている。
 敵は──アルハンメル王家の軍神と呼ばれるレオヴァルトの、圧倒的な魔力を前に大きく体勢を崩したように見えた。

「くそ、退避だ! 引け、引け────!!」

 敵国ランガンの将軍が叫び声に似た号令を上げれば、負傷した兵士たちが命からがら足を引き摺って地平線の向こう側に逃れていった。

「追いますか?」

 副将ゲオルクの問いかけに、レオヴァルトは涼しげに目元を細めて言う。

「いや、放っておけ。敵は虫の息、もはやランガンに戦う力あらず。それより……負傷者の数は?」

 表情を変えぬまま問いかけたレオヴァルトに、ゲオルクは伏した目元に暗い影を落とし、落胆のままに双眸を伏せて首を横に振った。

「死人の数も確実に増えております。ランガンですらこの有様。ザイールのような大国が相手だと、我が軍もどこまで持ち堪えられるか」

「……そうか」

 顔を覆う甲冑の下で苦々しげに眉間に皺を寄せたレオヴァルトだが、気持ちを切り替えるように一度ぐっと目を閉じた。
 眼裏に映るのは、妃である聖女ユフィリアの少女のように無邪気な笑顔だ。

「案じるな、ゲオルク。《《頼みの一手》》は、まだ残されている」

 

 
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