《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!

はいけい、つきよのめがみさま




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 ──はいけい、つきよのめがみさま。


『これは、もじがかけないぼくのかわりに、がっこうにかよっているひとに、いっしょうけんめいたのんで、かいてもらいました。よごれたかみしかなくて、ごめんなさい』


 まるで水の中にいるように、何も聞こえない。
 ぼやけた視界に目を凝らす気力も、すでに失われている。


『つきよのめがみさま。このまえは、ぼくのおとうさんをたすけてくれて、ありがとうございました。めがみさまのおかげで、おとうさんはげんきになりました。ぼくや、いもうとたちに、またわらってくれるようになりました。しごとにも、またいけるようになりました。すごくうれしいです』


 大きな黒い影が、目の前をゆったりと動くのがわかる。
 その影が何か言葉を発しているけれど、無意識に耳をふさいだユフィリアには聞こえていない。




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