《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!

グレースの憂鬱

 扉を開けて、グレースはうつむきがちな親友を部屋に招き入れた。
 犬の耳のように見えるツインテールがしゅんと萎んでいる。

「ユフィ……?! どうしたの、顔色が悪いわ」
「ううん、平気。疲れてるのにごめんね……ただ、ちょっと落ちてて。グレースの顔を見たら元気になれるかと思って」
「私とあなたの仲じゃない、そんな遠慮しなくていいのよ。私もちょうどあなたの部屋に行こうと思ってたとこなの」

 グレースはユフィリアを窓際のテーブルに座らせると、「美味しいジュースがあるんだった」と部屋に備え付けのパントリーに向かった。

「会ったらまずお祝いを伝えようと思っていたのよ、ユフィ。婚約……したのよね? おめでと……っ」

 グラスと葡萄ジュースをトレイに乗せたグレースが笑顔でユフィリアの隣に腰掛ける。婚約の話題にはふれず、ユフィリアの表情は相変わらず硬いままだ。

「あのね、ルグランの事なんだけど」

 唐突に出たルグランの名に驚いて、グレースはジュースをグラスに注ぐ手を止めた。透明な硝子の中でワインレッドの水面《みなも》がゆらゆらと揺蕩《たゆた》っている。




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