激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「御婚約もされると聞きました。おめでとうございます」
 詠羅は不躾に彼の全身を眺め、それからたずねる。

「本当にこの女と? 嘘でしょ?」
「本当ですよ」
「だって、こんな女」
「私の大切な人です」
 千暁が紫緒の肩を抱く。
 紫緒は照れて顔を赤くした。演技とはわかっているのに、不慣れなことに動悸がおさまらない。

「これはこれは、天社さん!」
 男の声が割って入り、全員がそちらを見た。
「パパ」
 詠羅の声が明るくなった。彼女の父の英智(ひでとも)だった。
 斗真は居ずまいを正して詠羅の横に立つ。

「永高様。いつも当社に御奉賛(ごほうさん)いただき、ありがとうございます」
 千暁が頭を下げる。
「活躍する会社として当然ですよ。ノブレスオブリージュですよ」
 器の大きさを見せるかのように英智は笑う。

 ノブレスオブリージュは身分の高い人にはそれに応じた社会的な責任や義務がある、というような意味だ。欧米には浸透しており、だから海外のセレブは社会貢献活動に積極的だ。

「パパ、知り合い?」
高天(たかま)神社の神主さんだよ」
 詠羅に言い、彼は千暁に向き直る。
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