このドクターに恋してる
ときめく人
 日曜日の夜までずっと悩んでいた私は月曜日、朝から疲れていた。
 沈んだ声で「おはようございまーす」と出勤すると、希子さんが心配そうな顔をした。

「どこか具合悪いの? おでこをぶつけた後遺症とか」
「いいえ! とっても元気ですよ。希子さん、昼休みに相談したいことがあるんですけど」
「うんうん、聞くわよ。とりあえず、今は元気なのね」
「はい」
「だったら、相談したことはひとまず忘れて、仕事に集中しなさい」
「はーい、わかりました」

 プライベートな悩みを職場に持ち込んで、業務をおろそかにしてはいけない。
 自分でもわかってはいたが、希子さんに言われたことで身を引き締めた。

 昼休みになり、希子さんと院内の食堂に向かう。
 病院スタッフや外来患者が多く訪れるため、いつも混雑している食堂だが、席が多く設置されているので座る場所に困ったことは一度もない。陳列されている料理からいくつかを選び、トレイに取り、最後に会計をする方式になっている。
 私と希子さんはそれぞれ四つの料理をトレイにのせて、電子マネーで支払い、壁側の席に座った。

「さてと、聞くわよ」

 希子さんはサラダのプチトマトを口に入れ、私を見つめた。
 私はミネストローネをふた口食べて、口を開く。

「実は昨日、郁巳先生のマンションにおじゃましました」

 
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