このドクターに恋してる
 私は決定的な言葉を聞き、郁巳さんに抱きついた。
 郁巳さんも同じように私と結婚すると思っていてくれたことが、とにかく嬉しかった。
 郁巳さんが私の背中に手を回して、ギュッと力を入れる。
 抱き合う私たちの向かい側から、鼻をすする音が聞こえてきた。
 
 驚くこことに院長が涙ぐんでいた。

「郁巳を守ってくれる人が現れて、本当に嬉しい……私は郁巳を守ってやれなかった。だから、病院を守ってくれとなかなか言えなかった……でも、勇気を出してよかった。岩見さんと話せてよかった……岩見さん、ありがとう……」

 郁巳さんは私から離れて、院長にハンカチを差し出した。院長はそれで涙を拭き、恥ずかしそうに笑う。

「院長、いや、お父さん。俺がここを継ぎます。任せてもいいと思ったときにいつでも任せてください。陽菜と一緒に守ろうと思います」
「ありがとう。これで、やっと安心できる」
「でも、すぐに引退しないでください。まだまだ院長としてのお父さんを見せてください」
「ああ、頑張らせてもらうよ。郁巳、これからもよろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」

 力強く頷き合う二人を見て、私も頑張ろうと意欲が湧き上がってきた。
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