プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
第一章 プレイボーイはお呼びじゃない
 目に大粒の涙を浮かべ、唇を噛みしめている女が一人。彼女はわずかに唇を開いて、小さく呟く。

「あーあ、勝っちゃった……どうしていつもこうなるんだろう……勝ちたくなんて、なかったなぁ……」

 『勝った』と言う割に悲壮感を漂わせる彼女は、とうとう決壊した涙腺からとめどなく涙を流す。目元を覆ったティッシュペーパーはあっという間にびしょ濡れになり、その役目を果たさなくなった。

 彼女がこんなにも涙にくれているのは、春に出会ったあの男のせいに他ならない。彼女の心を暴き、その奥深くまで潜り込んだあの男のせいに。

 それでも彼女は微塵も後悔していない。

 つかみどころがなくて、ちょっといじわるで、その実、優しくて、愛情深い、そんな彼と出会ったことを――
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