一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

皇帝が1番恐る者は…

(晴明side)
寧々が運んで来てくれた夕食をババッと豪快に胃袋に流し込む。
その間も香蘭の体調の変化が気になってしまうのだ。
側に寄り添い少しの寝返りも、瞬きすらも見落とさぬようにじっと見つめる。

息もまだ荒く、真っ白な頬は熱のせいで桃色に染まっている。冷たい水で布巾をさらし何度となく額を冷やし、滲み出る汗をひたすら拭く。

そんな事を繰り返していると、香蘭の唇が微かに震えて見えるから、寒いのだろうかと心配になりついには布団に潜り込み、体温を分け与えるかのように自ら湯たんぽ代わりになる。

そっと抱きしめ寄り添えば、荒い息遣いに胸が痛み、出来る事なら変わってやりたいと天をも仰ぐ。
どうか…早く熱が下がりますようにと、日頃から信じてはいない神にまで唱えてしまう有様だ。

明け方近く、空が段々と白々しさを帯びて来た頃、やっと香蘭の息遣いが穏やかになっていく。

これで峠は越えただろうか…寝ずに介抱していた俺も少しの安堵を覚え、知らぬ間に意識を手放していた。


ふいに頬を撫でられた気配を感じ目が覚める。

パッと目覚めれば、目の前にはフワッと微笑む香蘭の笑顔があった…

ああ、良かった目覚めたのだな…。
まだ覚め切らない意識の中で、そっと手を伸ばし桃のような頬に触れる。

熱もだいぶ下がったようだ。少し湿った前髪が昨夜の熱を思い出させる。
ああ、良かったと心底安堵してそっと彼女を抱き寄せふうーっと深く息を吐く。

コツンと額を合わせその体温を確かめる。まだ、若干熱いだろうか…微熱はありそうだなと、両手で頬を包む。

そんな風に香蘭の体調を触診していると、少しの抵抗感を覚え顔を覗き見る。

「どうしたのだ?」
見ると両手で胸を押されて距離を空けようとして来るから、少し反抗して強引に抱き寄せる。
ベタベタ触られたのが嫌だったのだろうか…?

「あの…私、すごく汗をかいてしまって…きっと汗臭いですよね…。」
申し訳なさそうな上目遣いだ。

「何を申すか、そなたの香りはいつだって蘭のように香しい。」

「…そんな事は…。」
香蘭はもっと恥ずかしがって俯いてしまう。その額に口付けを落とし、あわよくばと唇を奪おうと試みるが、寸でのところで可愛い小さな手に阻まれてしまう。仕方なくその手をぺろりと舐めれば、

「ひゃっ…⁉︎」
とびっくりした声で手を引くから、ここぞとばかりに唇を軽く奪う。

「晴明様…風邪を移してはいけませんので…。」
香蘭はさっきよりも真っ赤になって顔を隠す。
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