魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
「いや、其方は悪くない。其方の考えることは至極当然のことで、私も何度もそう考えた」

「ベルンハルト様が奥様を大切に思っていることはわかりました」

「本当にすまない。悪かった」

 今度は言葉と共に深く頭を下げた。
 誰も怖がらせたくないのに、一番身近にいるはずのアルベルトにまでそんな思いをさせてしまうとは。城の中で自分に向けられる視線に恐怖が混じらないように、ベルンハルトの願いはそれだけだ。

「で、ですから、ベルンハルト様が頭を下げてはいけないんですよ」

 ベルンハルトの態度を慌ててやめさせようとするアルベルトの顔に、恐怖がないことに安心する。

「だが、今のは私が悪い」

「私は、驚きはしますが怖がりはしません。他の者と一緒にしないで下さい。たまにはその仮面の下の素顔も見せていただきたいですよ。そうでないと忘れてしまいそうです」

「いや……それは」

 ベルンハルトの言葉に、アルベルトがニヤッと嫌な笑いを見せる。
 こんな顔をしたときは、大抵とんでもないことを言い出すのだが。

「本日は、湯浴みの介助でもいたしましょうか?」

「また、そのようなことを……」

「本来であれば女性を付けるのかもしれませんね。ですが、それは望んではいらっしゃらないでしょう?」

「当たり前だ」

「ですから、代わりに私が」

「それも望んでおらぬ」

「そんなこと仰らずに。その凝り固まったお体、しっかりほぐして差し上げますよ。そうすれば良い案が浮かぶかもしれません」

「だから、要らぬと言っている」

「残念ですね。たまにはそのようなお時間も良いと思ったのですが。もし、必要になりましたら、いつでも仰って下さい」

「……其方、父に似てきたな」

 冗談混じりのアルベルトとの会話に、部屋の中の空気が和んでいくのを感じる。ベルンハルトとの間にわだかまりを残さぬ様に、自己嫌悪で必要以上に傷つかない様に、わざとこんな振る舞いをしてみせる。
 仕事の腕だけではなく、気遣いまでヘルムートに似てきたと、わずかに頬が緩んだ。
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