1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています



「金子さん?」

金子という取引先に聞き覚えがない紗彩は首をかしげる。

「申し訳ございません。お目にかかったことがありましたでしょうか」

金子がおかしそうに笑いだした。

「今日が初対面ですよ。まさかお見合いの前に、こんなところでお会いできるなんて思ってもいませんでした」

「お見合い?」

「あなたの結婚相手ですよ、僕は」

「結婚? 私があなたと?」

どうも会話がかみ合わない。それどころか、お見合いの話は断ってもらったはずだ。
この男性が母との関係が悪くなった原因、山岡が勧めるお見合いの相手なのだろうか。

それにしても金子という男性は、初対面にしてはずいぶんと馴れ馴れしい気がする。

「もうお帰りですか?」
「はい。ご挨拶も終わりましたので」
「よかったら、上のバーで少しお話しませんか?」

金子は紗彩との距離を一歩ずつ縮めてくる。
人あたりのいい微笑みを浮かべているが、廊下の薄暗さのせいか、目だけは笑っていないようにも見える。
この人とは離れた方がいい気がして、紗彩はうしろに下がった。

「どなたかとお間違えではありませんか?」
「まさか! あなたみたいなかわいい人を間違えるわけないでしょう?」

かわいいと言われて少しも嬉しいと感じられないし、背筋に嫌な汗が流れる。
金子に対して、生理的な嫌悪感を紗彩は抱いていた。



< 29 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop