1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
「金子さん?」
金子という取引先に聞き覚えがない紗彩は首をかしげる。
「申し訳ございません。お目にかかったことがありましたでしょうか」
金子がおかしそうに笑いだした。
「今日が初対面ですよ。まさかお見合いの前に、こんなところでお会いできるなんて思ってもいませんでした」
「お見合い?」
「あなたの結婚相手ですよ、僕は」
「結婚? 私があなたと?」
どうも会話がかみ合わない。それどころか、お見合いの話は断ってもらったはずだ。
この男性が母との関係が悪くなった原因、山岡が勧めるお見合いの相手なのだろうか。
それにしても金子という男性は、初対面にしてはずいぶんと馴れ馴れしい気がする。
「もうお帰りですか?」
「はい。ご挨拶も終わりましたので」
「よかったら、上のバーで少しお話しませんか?」
金子は紗彩との距離を一歩ずつ縮めてくる。
人あたりのいい微笑みを浮かべているが、廊下の薄暗さのせいか、目だけは笑っていないようにも見える。
この人とは離れた方がいい気がして、紗彩はうしろに下がった。
「どなたかとお間違えではありませんか?」
「まさか! あなたみたいなかわいい人を間違えるわけないでしょう?」
かわいいと言われて少しも嬉しいと感じられないし、背筋に嫌な汗が流れる。
金子に対して、生理的な嫌悪感を紗彩は抱いていた。