1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
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白川家のリビングルームに、紗彩がいる。結都はこんな日がくるとは考えたこともなかった。
父と約束を交わしながらも、どこかで自分は甘えていたのだろう。
消防士として働き続けていれば、跡継ぎのために結婚して子どもを作ることを父は諦めると思っていた。
だから跡継ぎを作るためだけの結婚をする気はなかったし、そもそも結婚相手を探したこともなかった。
梶谷紗彩という理想的な条件の結婚相手が現れるとは、どういう運命だったのだろう。
彼女は会社のために、結都は自分の仕事のために結婚する。お互いにとって完璧な関係としか思えない。
単なる顔見知りから始まって、彼女が梶谷乳業で働いていることを知り、ホテルで再会した。
おとなしそうな雰囲気だったり、知的な印象だったり、紗彩は様々な顔を見せてくれる。
今日もまた、新しい彼女の一面を知ることができた。
両親と紗彩の会話を聞いていた結都は、ただ感心していた。
紗彩のこのバイタリティは、どこから出てくるのだろう。
華奢な体からは想像もできないくらい、次々にアイデアが飛び出してくるしテンポよく会話している。
父と会ったのは二度目だが、母とは初対面なのに臆することなく話している。
美食家で通っているが、あれでも母は社交界ではそれなりに力がある。その母までが紗彩にはニコニコと機嫌よさげだ。
それに損得勘定抜きで正直に人と接しているからか、経営戦略としては拙くても言葉には妙に説得力がある。
がんばっている紗彩のために、なんとか協力してやりたいと周囲に思わせるのは才能だろうか。
結都が意地を貫いたことによって、もともと会話が少ない家族はどこかぎくしゃくしていた。
それが紗彩ひとりが加わることで、明るく風通しがよくなっている。彼女を中心にして、皆が心地よく過ごせるのだ。
「いいもんだな」