1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
母と紗彩の会話を楽しそうに聞いていた父がつぶやいた。
「そうですね」
思わず父の意見に同意する。父も結都と同じことを考えていたと思うと不思議な気分になった。
そんな穏やかな時間が流れているところで、急に母が大きな声を出した。
「私ったら、ごめんなさい。お母様が入院していらっしゃるのに浮かれてしまって!」
紗彩の母が病気療養中だったと思い出したようだ。
「お気遣いありがとうございます。体調は落ち着いてきましたから、もう大丈夫です」
健気な言葉に感動したのか、母が紗彩の肩を抱いている。
「母もご挨拶したかったと申しておりました」
「でも、お母様が家にいらっしゃらないと毎日が心細いでしょう?」
その言葉を聞いて、結都はハッと気がついた。あの大きな屋敷に紗彩は今ひとりで暮らしているのだ。
周りは閑静な住宅地とはいえ、なにが起こってもおかしくない。
セキュリティ会社に防犯対策を依頼していたとしても、いざという時にひとりでは心もとない。
紗彩はまだピンときていない様子だが、父と母には結都が言いたいことがわかったのだろう。
「お嬢さんがひとりきりで暮らしているなんて、不用心だ」
「そうね。式は挙げなていなくても、入籍しておけば世間は納得しますわ」
結都の口からまた勝手に言葉が飛び出した。
「一緒に住もう、紗彩」
紗彩が絡むと、いつも思考をめぐらせるよりも先に口が動いてしまうようだ。
両親が同意してくれているなら、話は早いほうがいいと結都は意気込んだ。
目の前には呆気にとられた紗彩と、嬉しそうな表情の母。
そして向いに座る父は、自分の希望がかなう日も近いと思ったのか、満足そうだった。