1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています



母と紗彩の会話を楽しそうに聞いていた父がつぶやいた。

「そうですね」

思わず父の意見に同意する。父も結都と同じことを考えていたと思うと不思議な気分になった。
そんな穏やかな時間が流れているところで、急に母が大きな声を出した。

「私ったら、ごめんなさい。お母様が入院していらっしゃるのに浮かれてしまって!」

紗彩の母が病気療養中だったと思い出したようだ。

「お気遣いありがとうございます。体調は落ち着いてきましたから、もう大丈夫です」

健気な言葉に感動したのか、母が紗彩の肩を抱いている。

「母もご挨拶したかったと申しておりました」

「でも、お母様が家にいらっしゃらないと毎日が心細いでしょう?」

その言葉を聞いて、結都はハッと気がついた。あの大きな屋敷に紗彩は今ひとりで暮らしているのだ。

周りは閑静な住宅地とはいえ、なにが起こってもおかしくない。
セキュリティ会社に防犯対策を依頼していたとしても、いざという時にひとりでは心もとない。

紗彩はまだピンときていない様子だが、父と母には結都が言いたいことがわかったのだろう。

「お嬢さんがひとりきりで暮らしているなんて、不用心だ」
「そうね。式は挙げなていなくても、入籍しておけば世間は納得しますわ」

結都の口からまた勝手に言葉が飛び出した。

「一緒に住もう、紗彩」

紗彩が絡むと、いつも思考をめぐらせるよりも先に口が動いてしまうようだ。
両親が同意してくれているなら、話は早いほうがいいと結都は意気込んだ。

目の前には呆気にとられた紗彩と、嬉しそうな表情の母。
そして向いに座る父は、自分の希望がかなう日も近いと思ったのか、満足そうだった。










< 74 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop