1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています



出初式に誘われた意味ばかり考えていた紗彩は、仕事のことだと気がつくのに少し間が空いてしまった。
これは梶谷乳業にとって、とても重要なことだと結都は言う。

「実は、以前にお義母さんから頼まれていたんだ。会計監査して欲しいと」

「母があなたに」
「ああ」

母といつの間にそんな話をしたのだろう。だが、紗彩にも心あたりがあった。

「やっぱり……」

母はいつ、山岡の言動がおかしいと気がついたのだろうか。

「紗彩にも思うところがあったみたいだな」

田村工場長から聞かされた山岡のことを、結都に相談したいと思いながらも避けていたことが悔やまれる。
それよりも母が結都に会社の内情を話したのに、紗彩には知らせてくれていなかったことに傷ついていた。

「誤解しないでくれ。君に知らせたら研究開発の妨げになると思われたそうだ」

紗彩の気持ちが伝わったのか、結都が慌ててフォローしてくれる。

「そうだったんですか」

香澄の話を聞いてから、あれほど嫌な態度をとってしまったのに結都の優しさは変わっていない。

「お義母さんが倒れた日の電話は、山岡さんに気をつけるようにという忠告の電話だったそうだ」
「そういえばあの日は、廃業する原牧場のオーナーからの電話だって言ってました」

「廃業する原因のひとつに、乳価があったらしい。山岡さんに交渉を任せていたんだろう」

牛乳を生産者から購入する価格のことだ。会社と生産者が互いに相談して、適正な価格を決めることになっている。




< 97 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop