これを運命というのなら
事務所を通り抜けて、経理の瑞希ちゃんに書類を渡すと――。

社長をどうにかしてください!と、ほんまに困った様子で訴えられて。

何があったか、訊けば。

フランスワインの直輸入との提携先から一方的に契約を切る、と連絡があって。
陽希さんが激怒しているとか。

どういうこと?

そことの契約を取り持ってくれていたのは……アダン。

私が恵美から聞いた話と関係ないがあるってことなん?


陽希さんと話さないことには埒が明かない!


瑞希ちゃんに、ありがと、と伝えて。

社長室のドアを開ける。


「ただいま!陽希さん、どういうこと?瑞希ちゃんから聞いた!」


舌打ちをした陽希さんは、そういうことや!

手にしていた書類の束を叩きつけるように、自分のデスクに置いて。

視線を私に投げかけた瞳は、鋭さが怖いとさえ……感じてしまう程で。

恵美から聴いた話をしていいのか躊躇い、真っ直ぐにその瞳を見つめてしまっているから。


吐け!


やっぱり………言われたな、その2文字。


もう言うしかないのはわかっているけれど……言えずにいる私に。


「……早く吐けや!アイツと連絡も取られへん!今の状況、どうすることも出来へんねん!俺をこれ以上イラつかせんな!」


こんな事を言うなんて……かれこれ8年、一緒に居て初めてや。

こんなに焦っている陽希さんを見るのも、イライラしているのも。

さらにイライラさせるかもしれへんけど……

恵美から聞いた全てを打ち明けた。


ふざけんな!


今度は自分のデスクを叩いたせいで、書類がデスクから落ちて床にバラバラと散らばり。

大きな溜息をついた瞳は完全にすわっていて。

もう何も言えない。

こんな時に限って、頼みの綱の畑中さんは有給消化中で明後日まで居ないなんて。
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