これを運命というのなら
しばらくの僅か数分の静寂のあと――。

悪いな、と呟くように言いながら私の方へ歩きながら言ったかと思えば。

ちょっと付き合え!


そう言われて引っ張られるように――今、私は陽希さんの部屋に居て。

陽希さんが跨られている状態になっている。

会社を出る時、夜まで連絡して来るな!と内勤さんたちに言った根回しから、ごちゃごちゃ言う私にも。

黙ってろ!とか。

この状況で今から何が起こるのか、わからないわけじゃないんやけど………

まだ陽希さんからは何も聞いていない。


そして―――。



「綾乃……お前は……俺の女やんな?」


私に跨り、スーツのジャケットを脱ぎ捨てて。

ワイシャツのボタンを外して、ネクタイを緩めながら訊いてくる陽希さんの表情からは、不安が滲み出ていて。


当たり前のこと訊かんといてや。


満足気に微笑んだ陽希さんの表情から、不安はなくなっていて。


もしかして……根本的な原因に私も関わってるのかもしれない。

だから、確かめたことで。

あの一瞬の不安な顔をしていた、と思えば辻褄が合うのだとしたら―――


「陽希さん……好きにしてええから。あとでちゃんと話してや?」


私が陽希さんのやって身を持って確かめさせなければ、陽希さん自身が冷静になれない。

何の対処も出来ない。
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