これを運命というのなら
オフィスに戻ると―――。

まだ残っていてくれた内勤さんに、悪かった、と謝った陽希さんは、今回のことを説明してくれて。

陽希さんを信頼してくれているみんなは、通常業務をすることになった。

陽希さんと畑中さん、私に任せて。



「こっちから手をうつにはどうしたらいい?」


お先に失礼します!と、次々に帰って行って。

2人きりになったオフィス内の社長室で、珍しく陽希さんに訊ねられて。

思わず、え?と定位置のソファーで陽希さんに視線を移していた。


え?ってなんだよ?と、デスクに頬杖を付いて。

怪訝そうな表情を私に向けるから、珍しくて、と答えたのは。

そんなこと未だかつて、ほぼないに等しいから。


そうか?と、返されたら、そうやんか、としか返されへんやん。

何でも基本的には相談なしで決めて、先へ歩いて行こうとする人で………何回それで喧嘩したかわからない。


「今回の件に関しては、お前も関わってるんやから。俺のやり方だけやったら解決できへんやろ?それに………」


デスクの椅子から立ち上がった陽希さんは、ソファーの私の横に座って。

まずは綾乃を守ることが最優先で、と私が開いていたパソコンのワインリストを指さして。

この穴埋めをどうするかやろ。

その一部には、アダン経由で取引していたフランスのワイナリーから、直輸入しているワインもあるから。


それにしても……と思う反面、陽希さんが私に相談してくれるのは嬉しいわけで。

私を守ることが最優先って言ってくれたことも、もちろん嬉しい。
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