夜咲く花は愛を語る彼を照らす
 彼を見ると、彼も私を見ていた。

 目があってしまい、さらに落ち着かない。

「あの……さ」
「はい」

 私はつい、かしこまった返事をしてしまった。

 なにかを話そうとした彼は、だけど続きをなにも言わない。

 どーん! どーん! ぱらぱらぱら……。

 花火の音が二人の隙間を埋めていく。

 見つめ合う彼は、花火が上がるたびに光に照らされる。

「さっきの……あれ、本当のことにしたいんだけど」
「え?」

 私は思わず聞き返す。さっきのあれって、つまり……。

「俺と、つきあって」
「……いいの?」
 私はまた、聞き返してしまった。

「君がいいんだ。一緒にいると楽しくて。もう恋人なんて作らないって思ってたんだけどさ。気がついたら好きになってた」

 どーん!

 ひときわ大きく、花火の音が響いた。

 ぱらぱらぱら。

 私の心の衝撃と同じ大きさと余韻が響く。

「わ、私も、好きです」
「良かった」
 言いながら、彼は私の肩を抱き寄せる。

 顔が近づいて、私はどうしたらいいのかわからなくなった。鼓動が早くなり、血が昇っていくのだけがわかる。

 先ほどとは違う理由で、もう花火どころではなくなってしまった。

 どーん、どーん、どーん!

 大きな音と光が満ちる。花火はフィナーレに向かって大輪の花を咲かせ続けていた。




 終


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