君の瞳に僕の色は映らない
#Day5
「そうだよ」


「え、なにが?」



月曜日の昼休み。


廊下で桜田仁奈に会った。



会って、開口一番に、『そうだよ』と彼女。



何の話かさっぱりわからない。



「浩希くんが聞こうとしていること」



……察しているのか。


何も考えていなさそうだけど、彼女はそうではないようだ。



「もう知ってると思うから言うんだけどさ、私、みんなが言う、緑色が見えないんだよね。見えないっていうか、茶色と同じに見えるらしい」



それは知っていた。


土曜日、本で読んだからだ。


「浩希くん、本で読んでたでしょ?どれくらい知ってるの?」


「うーん……ちょっと一つ聞くけど、君は先天性なの?」


「うん、そうだよ」


今まで隠してきた意味があるのかと思うほど、さらりと答えた。


「先天性は、女性には稀だとか、今の技術では治せないとか、それくらいのことしか知らないよ、僕は」

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