今日は我慢しない。
「……!!」
気付いた時には、私は佐柳を思いきり突き飛ばしていた。
「っ、」
突き飛ばされたまま佐柳はショックを受けた表情でかたまっている。
「あ……」
どうしてそうなったのか、自分でもわからなかった。
なんて言えばいいのか、どんな顔したらいいのかもわからない。
「……ごめん。さっきの、本気じゃないよ」
「え……?」
「さすがに学生のうちに番って、重いよな」
そう言って困ったように笑う佐柳に、ズキンと胸が痛んだ。
「そろそろ帰るわ。また連絡する」
なんて言っていいかわからない私に、佐柳がニコッと優しく笑って頭をポンとする。
「またな」
バタンと扉が閉まって足音が遠のいていく。
「……」
私はその場にヘタッと座り込んで、うなじを触った。
番は、一生涯の、本能的なつながりを持つ契約。
番のαに強制的に関係を断たれたΩは……
――あなたはお母さんみたいになっちゃだめ
幼い記憶の中、お母さんの生気のない唇から紡がれたその言葉が、頭の中でこだました。