今日は我慢しない。
 背が高い。

 180センチは優に超えてそうで、妙に圧迫感がある。

 何となく髪の感じや雰囲気で四十代ぐらいの人だってわかる。

 その男の人が、渋い声で言う。


「那由さん、ですか?」

「……」


 なんで私の名まえを……?

 優し気な声だけど、怪しすぎる。


「三条那由さんですよね」


 いかにも私は三条那由だ。

 だけど、私はこんなおじさんの知り合いなんてほとんどいないし、こんな背の高いおじさん、多分会ったことない。

 知らない人が自分の名前を知っている。

 しかも家の近所のスーパー内で話しかけてくるなんて。

 こんなに不気味なことはない。

 
「ち、違います」


 愛想笑いでそう言って、急いで鶏肉をかごに入れてその場を離れる。


「あっ」


 すたすたと歩いてその場を離れるけど、その人は少し離れた後ろをついてくる。

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