今日は我慢しない。
きみにしか、しない
翌朝。
私は午前の学校を休んで区立新崎病院、Ω専門内科にいた。
「え? 抑制剤効かなかった?」
診察室で椅子に腰掛け、昨日起こったことを全て話した私に、田村先生は目を丸くした。
かかりつけ医の田村先生は初めてΩの診断を受けた時からずっとお世話になってる先生だ。
毎日おやつに大好きな和菓子を食べるためお仕事を頑張っている、細渕めがねの癒し系おじさんである。
「あーそうなんだーそっかそっか……うーん」
田村先生はカルテと睨めっこして唸りはじめた。
実のところ、私は怒っていた。
だって田村先生が抑制剤飲んでおけば大丈夫って言ったから、用法容量をきちんと守って服用していたのに。
もちろん全部が田村先生のせいとは言わないけど、それなりに大変だった昨日を思うと当たりたくもなる。
しばらく唸っていた田村先生はハッと顔をあげた。
「もしかして近くにαいた?」
「えっ?」