今日は我慢しない。


 意識するより前に、ドキンと心臓が高鳴った。

 直後、顔のすぐ横を男の子の腕が通る。

 その腕は、私が屈した画鋲を軽く押し込んでみせた。



「っ……」



 佐柳、だ。

 背中側に佐柳がいる、そう思っただけで、ブワッと顔が熱を持つ。


 
「そこ押さえてて」



 私の心情なんか知らない佐柳は平たんな声で言って、静かに画鋲をケースから取り出す。



「う、うん」


 小さく返事をして、言われた通りポスターの端を押さえると、佐柳はポスターの手際よくポスターの四隅に画鋲を押し込んでいく。

 ……佐柳と会うのは体育館で話して以来だ。

 佐柳がいる方の体半分がくすぐったくて、顔の表面温度はどんどん熱くなってくる。

 落ち着け、私。

 落ち着け落ち着け落ち着け……っ。


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