Last Flower
中学に入学した私は、鳥籠のスズメだった。
ここは東京の私立。右も左も桁違いの話ばかりだ。

私は横浜の家から1時間半かけて
まだ薄暗い時間に電車に揺られていると言うのに
ここにいる人たちは送り迎え付き。
組み合わせが10通り以上ある謎におしゃれな
制服を着こなしてステータスを飾っている。
学校帰りには渋谷の小洒落たカフェで
一皿2500円もするパンケーキを
写真だけ撮って永遠に食べない。
お弁当一つとっても私の知ってるお弁当じゃない。
体育祭の打ち上げが叙々苑。
週末には表参道でショッパーを片手に
新作を買い揃える日々。
遊びに行くと言えば、公園やゲームセンターじゃなく
福沢諭吉さんが何枚も飛んじゃうような世界線。
ブランド物のポーチを持ち歩きながら
夏休みに行く海外旅行の話をしているクラスメイトを
無視するように単行本の目次に目を落とす。

馴染めるはずもなく、いっつも芸術棟の4階から
夕陽に照らされるグランドを見ては
懐かしい感情に苛まれる。

地元にいたかった。
みんなと楽しくジャージをきながら学校に行きたい。
靴飛ばして明日の天気を占っていたい。
帰り道に駄菓子屋に行ってホームランバーを食べたい。
公園で水風船しながら暑いねって話したい。

広がっていく格差に言葉のない疎外感に
目を背けながら毎日を過ごしていた。
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